2020年 09月 12日
大正天皇御製漢詩と南北朝〜『金崎城趾』 名将・義貞を讃える〜
|
先週は、大正天皇御製の漢詩『芳野懐古』をご紹介しました。今回もやはり、大正天皇が南朝を偲ばれた漢詩をば。題は『金崎城址』。
金崎城址
登臨城址弔英雄
日落風寒樹鬱葱
身死詔書在衣帯
千秋正気見孤忠
城址に登臨して英雄を弔う
日落ち風寒くして樹鬱葱たり
身死して 詔書 衣帯に在り
千秋 正気 孤忠を見る
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 共に102頁)
〈超意訳〉
かつてこの金ヶ崎城で奮戦した英雄新田義貞を弔うため、城跡に登って下を見下ろすと、
日は落ちて寒々とした風が吹き、木々はこんもりと茂っている。
思えば義貞は戦死した際も後醍醐帝の詔書を肌身離さず身につけていた忠義の人。
長い年月がたった今も、節義を曲げない精神たる「正気」が義貞の孤高の忠誠を輝かせている。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下記のサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○△○●●○◎
●●○○●●◎
○●●○●○●
○○●●●○◎
転句の四字目が「孤平」になってるように見えますが、絶句としてこれはありなんでしょうか?下三字の●○●が○●●に準ずるという事でしょうか。それとも、古詩なのか。韻脚は「雄、葱、忠」の上平声一東。
以下は、語句解説です。
・登臨
高いところに登って下を見下ろす事。君主の位について人々を治める、という意味も。立場上、その意味をも意識した可能性はある。
・城址
しろあと。ここでは、福井県敦賀市にある金ヶ崎城。南朝の忠臣・新田義貞がここに籠城し足利尊氏と戦うも敗れた事で知られる。
・英雄
ここでは、新田義貞。後醍醐天皇の忠臣として知られ。鎌倉を攻略して北条氏を滅ぼし、その後は後醍醐の命で足利尊氏と戦うも敗れた。なお、金ヶ崎城で落命したのは義貞でなくその子・義顕らであるが、その後の文脈から義貞をさすと考えられる。
・鬱葱
鬱蒼と同じ。草木がこんもりとしげる様子。
・詔書
天皇の詔を記した文書。『太平記』によると、義貞は後醍醐天皇直筆の命令書を身につけて戦っていたという。
・正気
正しい気性。特にここでは、節義を守り忠義を尽くす心。南宋の忠臣・文天祥が元に捕らえられた中で作った『正気歌』は特に有名て、この精神を天地不変のものであるとうたっている。
・孤忠
孤高な忠誠
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
兵藤裕己校注『太平記 三』岩波文庫
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『朝日日本歴史人物辞典』朝日新聞出版
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
関連記事:
by trushbasket
| 2020-09-12 19:38
| NF








