2020年 10月 18日
大正天皇御製漢詩と南北朝〜『楠正成』 やっぱり楠公さんがNo. 1?〜
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大正天皇御製、南北朝漢詩シリーズ。今回も、前回・前々回に続いて楠木正成がテーマです。やはり、戦前期においては正成が国民的英雄であった事を反映してのこの数といえましょう。
楠正成
勤王百戦甚艱辛
妙算奇謀本絶倫
臨死七生期滅賊
誠忠大節属斯人
勤王百戦 甚だ艱辛
妙算奇謀 本と絶倫
死に臨んで七生滅賊を期す
誠忠大節 斯の人に属す
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 272頁)
〈超意訳〉
勤皇の志でなした多くの戦いは、非常に辛いものであった。
しかし正成の知謀機略は元来世に並びないものである。
そんな正成もついには道半ばで斃れたが、死に臨んでも「七度生まれ変わっても朝敵を滅ぼす」と念じた。
誠実な忠義や大いなる節義が、この人の中にはあったのである。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。こちらのサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○○●●●○◎
●●○○●●◎
△●●○○●●
○○●●●○◎
韻脚は「辛、倫、人」で上平声十一真。
・妙算
すぐれたはかりごと。
・奇謀
普通では思いつかない奇抜な計略。
・絶倫
「倫」とは仲間の事。周囲の人々と比べ、並外れて優れている事をいう。
・臨死七生期滅賊
『太平記』は、正成が湊川の戦いで足利の大軍の前に力尽き自害しようとする際に弟・正季と交わしたとされる会話を記録している。「死ぬ際の思いが何であったかで来世の善悪が決まるというが、今、何を思うか」と正成に問われた正季が「七度生まれ変わっても朝敵を滅ぼしたい」と答えたという。正成は「罪深い悪しき思いなのだろうが、自分も同じである」と返し、共に自害したと伝わる。
・大節
大いなる節義。ここでは、筋を曲げず朝廷に尽くす事を指すか。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
兵藤裕己校注『太平記(三)』岩波文庫
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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by trushbasket
| 2020-10-18 18:10
| NF








