2020年 11月 01日
大正天皇御製漢詩 『 聞鼠疫流行有感』 〜タチの悪い感染症流行の中で〜
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今年は、人類にとって災厄の年となりました。その原因となった新たな感染症、COVID-19の流行は未だ収束する気配がありません。古来、人類はしばしば感染症の脅威との戦いを余儀なくされてきました。今回はそうした中での、大正天皇御製漢詩をご紹介しようかと。
時は明治三十六年(1903)、横浜に入港した船を起点として、ペストが横浜・東京で伝染・流行し多くの死者が出ました。
こうした中、当時、皇太子であった大正天皇は、事態を憂慮した詩を残したのです。では、見ていきましょう。
聞鼠疫流行有感
如今鼠疫起東京
我正聞之暗愴情
一掃祲氛須及早
恐他刻刻奪民生
鼠疫の流行を聞いて感有り
如今 鼠疫 東京に起こる
我正に之を聞いて 暗に情を愴ましむ
祲氛を一掃する 須らく早きに及ぶべし
恐る 他の刻刻 民生を奪うを
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 58頁)
<超意訳>
ペスト流行を聞いて思う
今、ペスト禍が東京で発生している。
私は今まさにこれを聞いて、暗澹たる気持ちだ。
悪しき疫病の気を払い去るのは、一刻も早くしなければならない。
さもなくば刻一刻と人々の生活が脅かされる。私はそれが心配でならぬ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。こちらのサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
韻脚は「京、情、生」の下平声八庚。
以下は語句解説です。
・鼠疫
ペスト。鼠を媒介して広がるため、こう呼んでいる。
・愴
悲しみにうちひしがれる。
・祲氛
祲は禍の元になる妖気、氛は気に同じ。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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by trushbasket
| 2020-11-01 20:00
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