2020年 11月 07日
茶湯と四季の象徴〜小堀遠州書捨文、茶箱点前〜
|
いよいよ冬が近づきましたね。茶の湯の世界では、この頃に風炉から炉、すなわち夏バージョンから冬バージョンへ切り替えていきます。という訳で、今回は茶の湯と四季の風物に関連した四方山話を。
「雪月花の時に最も君を憶う」と白楽天が詩によんだように、中国文化圏では四季の風物に趣を見出すのが美的生活の基準とされてきました。
我が国も無論例外ではなく、王朝文化を中心にそうした価値観が重んじられました。有名な例を挙げるなら、清少納言の『枕草子』にある
春 曙
夏 夜
秋 夕暮
冬 早朝
という組み合わせが思い浮かぶ人も多いかと存じます。
さて、小堀遠州は茶の湯の世界に王朝文化の風雅を取り入れた人物として知られます。彼は『小堀遠州書捨文』で
春は霞、夏は青葉がくれの郭公鳥(ほととぎす)、秋はいと淋しさまさる夕の空、冬は雪の曉、いずれも茶の湯の風情ぞかし。
(『茶の湯便利手帳4茶の湯人物事典 略伝・ことば・逸話』世界文化社 96頁)
と述べています。彼は彼の見識による四季の風物を見出していた訳ですね。ここでは、
春 霞
夏 青葉で姿が見えず声のみ聞こえるホトトギス
秋 夕方の空の淋しさ
冬 雪の暁
というワンセット。『枕草子』と重なるところ、そうでないところがあるのも興惹かれます。
これに加え、遠州は「四酔」、すなわち「春は花に酔い、 夏は風に酔い、秋は月に酔い、冬は雪に酔う」(同書 同頁)というフレーズも好んだそうです。こちらは、「雪月花」の伝統を重んじた感が。夏に風を加えたのが、ひと工夫でしょうか。
さて、四季の風物、雪月花、といえば。茶箱、というのをご存知でしょうか。旅行や野点に備えて最低限の茶道具一式を備えた携帯用の箱です。利休好みのものが最初とも言われますが、茶箱を用いた点前を考案したのは裏千家十一世である玄々斎です。まず「雪月花」が考案され、次いで簡略化した「卯の花点」が生み出されています。
春は花、秋は月、冬は雪になぞらえた点前があり、夏に相当するのが「卯の花」という訳ですね。
王朝の影響を受けた日本伝統文化らしく、四季の風情も取り入れる。茶の湯も、そうした性格は無論濃厚にある事がわかります。その範囲で、四季の象徴として何を見るかに幾許か揺れがあるのも興味深いところですね。
【参考文献】
清少納言『枕草子』池田亀鑑校訂 岩波文庫
『茶の湯便利手帳4茶の湯人物事典 略伝・ことば・逸話』世界文化社
千宗室『茶箱点前全伝』淡交新社
『日本大百科全書』小学館
『大辞泉』小学館
関連記事:
四季への感性含め、王朝文化のあれこれを知るには存外良い一冊。
by trushbasket
| 2020-11-07 12:53
| NF








