2021年 01月 17日
大正天皇御製漢詩「人日」〜一週間遅れながら、年始の節句を思う〜
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まだ一月だというのに、早くもネタに苦しみはじめました。という訳で、恐れ多くも袞竜の袖にお縋りする事と致します。すなわち、久々に大正天皇御製漢詩を取り上げようかと。今回鑑賞する作品は大正二年に詠まれた『人日』。人日とは、一月七日の事で五節句の一つ。この日に七草粥を食べる風習があることは、ご存知の方もおられるかと。一週間遅れではありますが、この日が題材となった漢詩を拝見致しましょう。
人日
新年七日喜新晴
内苑風暄春鳥鳴
一笑廚人諳節物
寒梅花下菜羹成
新年七日 新晴を喜ぶ
内苑 風暄(あたた)かくして 春鳥鳴く
一笑す 厨人 節物を諳んじ
寒梅花下 菜羹成る
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 132頁)
〈超意訳〉
一月七日
新年の七日が晴れたのは喜ばしい。
宮廷の御苑は風も暖かく、春の鳥が鳴いている。
料理人は季節のものをわきまえていて、
寒梅が咲くもとに七草粥を出してくれた事が嬉しくて思わず顔が綻んだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。こちらのサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○○●●●○◎
●●○○○●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
韻脚は「晴、鳴、成」の下平声八庚。
以下、語句解説です。
・新晴
晴上がった空。「新年」と対応させて平仄を整えています。
・内苑
御所の中庭、宮中の庭。
・暄
あたたかい。
・一笑
ここでは、にっこりすることを意味する。
・厨人
料理人。厨は、調理場を意味する。
・節物
季節のもの
・諳
そらんじる、暗記する
・寒梅
寒中に咲く梅
・菜羹
ここでは、七草粥を意味する。羹とは、熱い吸いもの。菜とはおかずを意味する事もあるが、ここでは春の七草と解すべきであろう。
ご存知の方も多いとは思いますが、念のため。七草粥に入れる春の七草は、芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう、ハハコグサのこと)、繁縷(はこべら)、仏の座(タビラコのこと)、菘(すずな、カブラのこと)、蘿蔔(すずしろ、ダイコンのこと)を意味します。平安初期に中国から伝わった風習で、邪気を祓い一年を恙無く過ごす事を祈ったものだとか。現在の七草は鎌倉期の『河海抄』に記された和歌に詠み込まれた七種が採用されたものです。芹は目の充血やめまいを予防し、薺は消化器を整え、御形は咳止め、繁縷は胃に効き、仏の座は筋肉痛を和らげ、菘や蘿蔔は胃腸を整えるのだとか。
なお、旧暦一月十五日に米、粟、稗、黍、麦、胡麻、小豆を入れて食べる風習もあったらしく、こちらを「七草粥」と称する事もあるようです。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『食の医学館』小学館
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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by trushbasket
| 2021-01-17 13:28
| NF








