大正天皇御製漢詩「梅雨」〜今年は梅雨入りが早いですね〜
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まだ五月ではありますが、早くも梅雨入りのようで。今回、せっかくなので(?)、梅雨を題材とした大正天皇御製漢詩を取り上げようかと思います。皇太子時代の明治三十年に詠まれた作品です。では、見ていきましょう。
梅雨
乍雨乍晴梅熟時
仰天偏願歳無飢
靑苗挿遍水田裡
看到秋成始展眉
乍ち雨ふり乍ち晴るる梅熟する時
天を仰いで偏えに願う 歳飢うる無きを
青苗挿し遍し 水田の裡
秋成を看到れば始めて眉を展ぶ
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 14頁)
〈超意訳〉
雨が降ったかと思えばすぐに晴れたりするのが、この梅の実が熟する時期というものだ。
天を仰いで、この年は飢餓が生じる事がないようただ願っている。
今は青々とした苗を水田にくまなく植えているが、
秋になって実り豊かなのを見て初めて、眉を開き安堵する事ができるのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●●●○○●◎
●○○●●○◎
○○●●●○●
●●○○●●◎
韻脚は「時、飢、眉」の上平声四支。
以下は、語句解説です。
・乍
「ながら」と読む事が多い。ただし本作では「たちまち」とルビが振られている。「…しながら」「にもかかわらず」「そのまま」「そろって」など意味は多様。ここでは、天気の目まぐるしい移り変わりを「〜しながら」といった表現にしたものであろうか。
・梅熟時
梅が熟する頃。六月ごろに果実が黄色く酸味を持って熟する。未熟な果実は有毒。その時期に降る雨を梅雨と称するという説も。
・挿
差し込む。
・秋成
秋の実り。因みに徳川期には、秋に納める年貢を「秋成(あきなし)」と称した。
・展眉
「展」には「伸び広げる」「開く」といった意味がある。「開眉」「眉を開く」「眉を伸べる」といった表現で「憂いがなくなり安心する」という意味がある。
豊かな実りと国民に飢餓がないよう祈る、帝王の詩に相応しい内容の作品といえそうです。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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