江馬細香『夏夜』〜夏になったので、夏の漢詩〜
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すっかり暑くなってきました。そこで今回は、夏を主題にした日本漢詩をご紹介しようかと。テーマは江馬細香『夏夜』。
作者である江馬細香(1787-1861)に関しては以前に解説した記事があるようなので、こちらを。何でも頼山陽と相思の仲となりながら結ばれなかったようで、今回の作品もひょっとするとそれを念頭に置きつつ読むべきではという解釈もどこかで見た気はしますが記憶が定かでありません。
夏夜 江馬細香
雨晴庭上竹風多
新月如眉繊影斜
深夜貪涼窓不掩
暗香和枕合歡花
(江馬細香『湘夢遺稿 上』春齢庵蔵版より)
雨晴れ 庭上 竹風多し
新月 眉の如くして 繊影 斜なり
深夜 涼を貪りて窓掩はず
暗香 枕に和す 合歓の花
〈超意訳〉
先刻まで降っていた雨も止み、庭では竹を抜き抜ける風が強いらしい。
西の空に見える月は眉のように細く、繊細な光が傾いて斜めになっている。
夜も更けた今、涼しさを求めて窓を開けたままにしていると、
暗い中でも分かるほどのネムの花の香りが枕についた香りと合わさって漂っている。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●○○●●○○
○●○○○●◎
○●○○○●●
●○○●●○◎
韻脚は「斜、花」の下平声六麻。「多」は下平声五歌ですから、少し違います。作者がそれを知らなかったとは思えませんし、分類が近いという事でOKとしたんでしょうか?そこまでは分かりませんでした。
以下は、語句解説です。
・竹風
竹を吹き抜ける風。
・新月
太陰暦でのその月の最初に見える月。夕方、西の空に細く見える月を指す。
・繊影
繊細な月の光。影とは、ここでは月の光を意味する。
・貪涼
涼しさを求める
・暗香
どこからともなく漂う香り。暗闇の中でも分かる香り。梅などによく用いる。
・合歓
ネムの木。マメ科の落葉高木で六月から七月にかけて夕方に約20個からなる頭状をした淡赤の花をつける。なお、「合歓」には「喜びを共にする」「相思の二人が喜びを共にする」といった意味もあるそうである。
【参考文献】
江馬細香『湘夢遺稿 上』春齢庵蔵版
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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そういえば、この間が本能寺の変の日でしたな。








