2021年 09月 01日
〈読書案内〉清水克行『室町は今日もハードボイルド』〜中世に遊び、現代を眺める in 令和〜
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日本中世史の碩学が、現代と異なる姿を示す中世社会について軽いタッチで解説したり、或いはその知見を踏まえて現代を新たな視点で見つめたりする。そんなエッセイ集として上横手雅敬先生の『日本史の快楽 中世に遊び現代を眺める』についてだいぶ前にご紹介した事があるかと思います。
『日本史の快楽』の出版は1996年ですので、2021年となっては少し古い面も色々出ているかと思います。そこで、似たようなエッセイ集で新しいものを今回はご紹介しようかと。すなわち、清水克行先生のエッセイ集『室町は今日もハードボイルド』(新潮社)が今回のお題。清水克行先生は、『室町幕府将軍列伝』にも関与した南北朝・室町の専門家です。
現代日本人が「日本人らしさ」として抱くイメージとは大きく異なる生き様を見せていた。そうした話題に焦点を当てて、近年の研究結果を踏まえ興味深い話を(改元あれこれなど)現代日本のトピックスも混じえながら展開してくれます。
血の気が多く、命が驚くほど軽く面子が重い。住む世界が少し違えばルールも違うし測定単位も違う。寺社への落書をやたら好むが信仰心がないわけじゃない。当時における「罪」の扱い方は何だか「公衆衛生」的。現代からすれば驚くほど呪術的・迷信的な振舞いが多いが、実は宗教的権威が合理的精神にとって変わられつつあるある裏返し。などなど、色んな話が縦横無尽に軽妙なタッチで語られています。そして、実は今日の我々も、中世の人々の心性と完全に異なっている訳ではない事も、ちゃんと触れられているのは好印象。
専門家の間でも意見が割れてそうな話もありますし、専門書でなくてエッセイだから許されるというレベルの踏み込んだ話もあったりはします。だから、鵜呑みにしてしまうのはアレかもしれません。でもまあ、専門書を読む気力がないときに、日本中世社会を知るとっかかりとするには良さそう。専門家による、寝っ転がって読める手軽なタッチの本は貴重ですよ。専門家だけに、ちゃんとした文献に乗っ取って話をされてますし、末尾にも参考文献一覧もあるのは(当然かもしれませんが)ありがたい。電子書籍版でも売ってますので、興味のある方は手に取ってみては如何かと。
by trushbasket
| 2021-09-01 20:23
| NF








