2021年 09月 08日
〈読書案内〉上木敬『破壊神マグちゃん』〜供物を捧げよ!〜
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『逃げ上手の若君』目当てに再び週刊少年ジャンプを読み出したこの頃。当然のように、他の掲載作にも心惹かれたりもしました。その一つが、上木敬先生の『破壊神マグちゃん』(集英社)。クトゥルフをモチーフにした邪神たちと人間たちの交流を題材にしたコメディ作品です。
今を遡る事、600年前。混沌教団によって召喚された「破壊神」マグ・メヌエクでしたが、彼らを邪神・邪教として敵視する聖騎士団によって封印されます。そして21世紀日本で。とある海辺の街に住む女子中学生・宮薙流々が偶然にその封印を解いてしまいます。諸事情で一人暮らしだった流々は、なんと「破壊神」を家族の一員として迎え入れる事に。そして封印を経てすっかり弱体化した「破壊神」の方も、自らを崇拝するでも敵視するでもなく「マグちゃん」と呼んで対等かつ友好的に接してくる流々に興味を持ったのか、かつての力を取り戻すための手段と称して共同生活をする事になります。やがて、他の邪神たちや混沌教団・聖騎士団もなんやかやで姿を現し、町の人々に混じって生活する事になっていくのです。
基本は、邪神たちと流々たち人間とが仲良くなっていく様を軸にした一話完結型日常コメディ。話のタイプは割に多様で、抱腹絶倒なドタバタあり、ハートウォーミングな話あり、たまにシリアスな話もあり、時にはバトル展開すら。それでも、どんなタイプの話が来ても、キャラクター設定や世界観構築、ストーリー構成がしっかりしているので違和感なく読めるのは流石です。ベタな主題の話でも、一捻りしてくれるので新鮮な楽しみがありました。
邪神たちはクトゥルフがモチーフだけあってか、海の生き物が元になったデザインをしています。弱体化しているせいもあって、丸っこくデフォルメされた姿が何とも可愛らしく微笑ましい。まあ、神々としての能力(「権能」)は一つ間違うと人類世界の脅威になる剣呑なものばかりですけどね。
キャラクターの大半が性根がまっすぐなのも魅力的。流々は大変な家庭環境の中でも明るく無邪気な良い子ですし、幼馴染の錬少年も真面目で誠実と言って良い。町の人たちも邪神たちを当たり前のようにすんなり受け入れてくれているのは安心感を覚えますし、邪神たちもなんやかやで真摯なキャラが多い(一部例外あり)のは好感が持てます。「邪神」たちは自身が邪悪というより、彼等を信仰した人々から寄せられた「願い」に応じてきたに過ぎない事も多々あった。信徒たちの「願い」、そしてそれに対する敵対者たちの目線が彼等を「邪神」にしてきた。そんな面がありそうですね。主人公マグちゃんも、神様だけあって、尊大ながらも実に鷹揚かつ律儀で器の大きさを感じさせます。そして、長く眠っていたからか、人間たちに混じって過ごすのが初めてだからか、独特な感性による大仰な言動やズレた行動がおかしさを醸し出してくれます。特に食レポの数々は一見の価値あり。
個人的なお気に入りは、「狂乱」のナプターク(ナプタくん)。マグちゃんにやたら対抗心を燃やす浅慮なお調子者ですが、行動力と学習能力に富んだヒトデ型の邪神です。紆余曲折をへて人間世界に馴染み成長していく姿が実に愛らしい。コメディでもシリアスでも輝ける(基本はコミカルですが)恐るべき邪神です。眷属のヤドカリ軍団もいじらしくて良いですよ。
『逃げ若』もそうですが、ジャンプ連載中の作品は過酷な世界観やストーリー展開を持つものが少なからずあります。少し前の看板作品『鬼滅の刃』しかり、今の看板『呪術廻戦』しかり。それだけに、本作の優しい世界観は、読者の心の癒しになってるとか聞きます。個人的にもそれには納得。
という訳で。もし興味を持たれた方は、雑誌ででも単行本ででも、手に取っていただけるとうれしく思います。単行本は、2021年9月現在で5巻まで出ています。あと、雑誌派の人はアンケートで投票していただけたらもっと嬉しい。「次にくるマンガ大賞2021」のコミックス部門では、15位に入ってます。今後も、アニメ化などの期待を抱きつつ支持していく所存です。
by trushbasket
| 2021-09-08 21:04
| NF








