2021年 09月 26日
寒山詩より「吾心似秋月」〜中秋の名月は終わりましたが〜
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早いもので、中秋の名月もはや過ぎました。今年は久々に満月とこの日が一致したそうで、美しい月を堪能した人も多いのではないかと。世の中色々ありますが、こうした景色を励みにしたいものだと思っています。
さて。今回もせっかくなので秋の月を題材にした漢詩をご紹介しようかと。
吾心似秋月
碧潭淸皎潔
無物堪比倫
敎我如何說
吾が心 秋月に似たり
碧潭 淸うして皎潔たり
物の比倫に堪へたる無し
我をして如何が說かしめん
(太田悌蔵訳註『寒山詩』岩波文庫 49頁)
〈超意訳〉
私の心は、秋の名月のように澄み切っている。
青い水をたたえた淵が、清らかで汚れないようなものだ。
たとえとしてこれ以上のものはない。
私は、他にどう説明したらよいのだろう。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
○○●○●
●○○●●(韻)
○●○△○
△●○○●(韻)
韻を踏んでいるのは「潔」「説」の入声九屑。いずれも仄音です。このように仄音で韻を踏むケースも、時にあります。
以下、語句解説です。
・碧潭
青い水をたたえた深い淵
・皎潔
白く清らかで汚れがない
・比倫
ならぶもの。比類と同じ。たとえる。
「吾心似秋月」の句は澄み切った心情や仏の真髄を表すものとして禅の世界でもよく用いられるそうです。曇りなく澄み切った心境、という点で「明鏡止水」という語と通じるものがありますね。己の心の中にこそ、仏がある。しばしば禅宗の教えで聞く言葉ですが、この詩にもそんな意味合いがあるのでしょうな。
【参考文献】
太田悌蔵訳註『寒山詩』岩波文庫
諸田龍美『茶席からひろがる漢詩の世界』淡交社
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
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by trushbasket
| 2021-09-26 12:03
| NF








