大正天皇御製漢詩 秋をうたう〜『秋夜即事』〜
|
まだまだ昼間は夏のような暑さが残るとはいえ、日の入りも早くなりました。やはりもう、秋なのですね。
という訳で、今回は秋を題材にした大正天皇御製漢詩をとりあげようかと。詠まれたのは即位間もない大正二年、題は『秋夜即事』。では、見ていきます。
上林霜落氣蕭森
樹帶秋聲夜已深
座有詞臣尙相侍
南樓燈火兩詩心
上林 霜落ち 気蕭森
樹は秋声を帯びて夜已に深し
座に詞臣有りて尚お相い侍す
南楼の燈火 両詩心
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 158頁)
〈超意訳〉
御苑では霜が降りて物寂しい気配がする。
木にも秋風の音が吹き渡って夜も既に更けていく。
席には詩文に優れた臣下がまだ私に付き添ってくれており、
観月の楼閣に灯火をともして二人で詩に思いを致すのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●○○●●○◎
●●○○●●◎
●●○○●○●
○○○●●○◎
韻脚は「森、深、心」の下平声十二侵。
以下、語句解説です。
・即事
目の前の風景をそのまま詩に詠む事。
・上林
天子の御苑。長安の西にあった「上林苑」に因む。上林苑は、始皇帝が創設し前漢武帝が拡張したとされ、珍しい動植物を集めた大庭園だったという。
・蕭森
樹木の多い様子、もしくは物寂しい様子。
・詞臣
詩文に優れた臣下。ここでは大正天皇にとっての詩の師である三島中洲を指すのではないか、とされる。
・南楼
南の楼閣。庾亮が武昌江夏の南楼で月を賞詠したという故事がある事から、観月の楼を特によう呼ぶ事も。
・詩心
詩の趣を解する心。
秋の気配を味わいながら、師と慕う人と詩を語り合う。そんな光景が目に浮かびます。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
関連記事:
「大正天皇御製漢詩「人日」〜一週間遅れながら、年始の節句を思う〜」
「大正天皇御製漢詩「駐春閣」を鑑賞する〜今年も、春が来ました〜」








