2021年 10月 16日
大正天皇御製漢詩、秋をうたう2〜『聽蟲聲』~
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気候もだんだんと秋らしくなってきていますね。という訳で今回も先週に引き続いて、大正天皇御製漢詩の秋を主題にした作品を味わおうかと思います。お題は『聽蟲聲』、秋の虫が鳴いているのをうたったものです。作られたのは、大正三年。では、見ていきます。
聽蟲聲
夜來明月照南樓
愛聽階前蟲語幽
想得山中凉氣動
禁園風露又新秋
夜来 明月 南楼を照らす
愛し聴く 階前 虫語の幽なるを
想い得たり 山中 凉気動くを
禁園の風露 又た新秋
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 191-192頁)
〈超意訳〉
夜になると澄み切った綺麗な月が観月の楼を照らしている。
そんな中で私は階の前の庭先で虫が鳴く声を喜んで聞いている。
思うに山の中では秋の涼しい気配がやってきているのだろう。
この宮中の庭でも、秋風や露が初秋の来たのを告げているようだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●○○●●○◎
●△○○○●◎
●●○○○●●
△○○●●○◎
韻脚は「楼、幽、秋」の下平声十一尤。
以下、語句解説です。
・夜来
「昨夜以来」または「夜になってから」。ここでは、月を詠んでいるため後者かと。
・明月
晴れた夜の月。澄み渡った満月。
・南楼
観月のための楼閣。詳細は前回の記事参照。
・階前
建物に出入りする階段の前。庭先。
・虫語
虫の鳴き声。
・幽
奥深く静かな様子。
・凉気
「涼気」と同じか。涼しい気配。
・禁園
宮中の庭園。
・風露
風と露と。涼しさをもたらす秋風はしばしば詩歌の題材になる。また露は秋の風物詩とされ無常や悲哀をしばしば象徴する。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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