2021年 12月 19日
大正天皇御製漢詩『源為朝』〜「鎌倉殿」より上世代の源氏のレジェンド〜
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新しい年が目の前なのを実感するこの頃。来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にちなんで「鎌倉殿」こと源頼朝の祖先にあたるレジェンド武将・源義家を題材にした大正天皇御製漢詩を以前にご紹介いたしました。
さて、頼朝の叔父にあたる武将にも、レジェンドはいます。すなわち鎮西八郎為朝。今回は、大正天皇が為朝を題材に詠まれた七言絶句を取り上げたいと思います。大正三年の作です。
源爲朝
八郞雄武有誰儔
絶技穿楊膂力優
破浪南遊果何意
長留遺蹟在琉球
八郎の雄武 誰有ってか儔(たぐい)せん
絶技 楊を穿って 膂力優なり
浪を破って南遊す 果たして何の意ぞ
長く遺蹟を留めて 琉球に在り
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 212頁)
〈超意訳〉
鎮西八郎の優れた武勇は誰も比肩できない。
弓の技量は、古の養由基が柳の葉を射抜いたのに並ぶもので、腕力もすばらしい。
そんな彼が波浪をものともせず南に渡ったのは、どういう意図からだったのか。
為朝ゆかりだという場所が、長らく琉球には残っている。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●○○●●○◎
●●△○●●◎
●△○○●○●
○○○●●○◎
韻脚は「儔、優、球」の下平声十一尤。
以下、語句解説です。
・八郎
源為朝の事。源為義の八男、通称が鎮西八郎。弓矢に長じていた事で知られる。少年時代に父の不興をかって九州へ追われ、現地で合戦し勢力を伸ばした。そのためやがて朝廷から召喚される。のちに保元の乱では父と共に崇徳上皇側に立って奮戦するも敗戦、伊豆大島に流される。現地でも勢力を広げたため討伐を受け滅ぼされた。『中山世鑑』『おもろさうし』などは琉球に渡り王家の祖となったという伝承を伝える。
・儔
ともがら、同じような人々。
・穿楊
穿とは、穴を開ける。古代中国で養由基という弓の名手が百歩離れた場所から柳の葉を百発百中で射抜いた事を指す。
・膂力
腕力、筋力。膂とは背骨を指す。
・南遊
南に向かう事。ここでは琉球に向かったという伝説を指す。
・遺蹟
旧跡。ゆかりの場所。
・琉球
今の沖縄県。かつては琉球王国が存在した。為朝がその王家の祖であるという伝承がある事は上述した。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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