2022年 01月 19日
<言葉>「莫妄想」~不安や怒りに飲み込まれないように~
|
年が明けてから、気が重くなるような話ばかりです。まず、またもやCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染者が記録的なペースで増加していますね。そこへもってきて、トンガの大噴火。その他にも、ニュースをつければ碌な話がないように思えてしまいます。という訳で今回は、そんな気分の時に自分に言い聞かせるにふさわしそうな言葉を。禅語「莫妄想」、『景徳伝燈録』にある言葉だそうです。「まくもうそう」、読み下すと「妄想する莫れ」となります。
妄想とは、仏教で「真実でないものを執着によって真実であると誤って認識すること」を意味するそうで。そうした状況に陥るな、という意味ですね。色々と考えをめぐらす事で、かえって迷いが生じる。だから余計な分別をめぐらさない方がよい、といった話になります。
手元の解説書によれば。「悩んだり苦しんだり」が原因で「さまざまな精神的疲労や肉体的疲労」に陥り「体そのものの健康が損なわれてしまう」(有馬頼底著『やさしくわかる茶席の禅語』世界文化社 57頁)ものだ、と。それなら、そうした苦しみのもとを断ち切ってしまう他ない。そのためにはいったん「心の中をからっぽにする」(同書 58頁)。座禅なら座禅、仕事なら仕事で、目の前の為すべきことに徹して「精神をととのえ、純化させる」(同書 同頁)。そうすれば、苦しみの基である妄想だけでなく、「心を空っぽにしよう」という思いすらいつしか忘れる。そうした境地に至る事で色々とリセットする。そういう事が必要な時もあるのではないかと思います。
無論、常に目の前のことだけ考えて心を空っぽ、という訳にはいかないかもしれません。分別を働かせない訳にはいかない時、働かせるべき時だって、実際にはあります。それでも。ままならない事で怒りや焦り、失望などにかられる時は。そうした負の感情に飲み込まれそうな時は。意識して目の前の事に徹して心を空っぽにする事を心がけるべきなのかも。
思えば。人間一人の力が及ぶ事は限られています。人としてなしうる限りの最善を尽くしたとしても、COVID-19に罹る時は罹りますし、天災に遭う時は遭う。だから投げ出してしまうのは論外でしょうが、なすべき対策はなすべきでしょうが、それでも心のどこかで「ダメなときはダメさ」という諦念と開き直りを同居させておく。妄想に飲み込まれるよりは、その方がマシかと思います。標準予防策等の推奨される感染予防につとめ、天災への備えはし、自分が着実にできる事はきちんとした上であとは運否天賦。そのくらいで構えていたいものです。
この教えを活かすには、自分の心の状態に常に心を配り、自分が負の感情に飲み込まれてないか常に自省していなければならぬのは言うまでもないですが。言うは易く行うは難しですな、まさしく。それでも、負の感情に飲み込まれないよう、努めていきたいと思います。…自信はあまりないですが。
【参考文献】
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
有馬頼底著『やさしくわかる茶席の禅語』世界文化社
関連記事:
by trushbasket
| 2022-01-19 23:18
| NF








