2022年 01月 22日
一月半ばの漢詩 元好問「元夕」〜金朝時代の証言者〜
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一月も、はや後半。一月半ばの十五日は、古来から「元夕」もしくは「上元」「灯節」とか呼ばれ中国では街に提灯が飾られ賑わう祭礼だったようです。今回は、それを題材にした漢詩を見てみようかと。お題は、元好問『元夕』。
元好問(1190-1257)は、金末期の文人です。金王朝がモンゴルの攻勢によって滅亡に追いやられる中を官人として仕え、金滅亡後は虜囚体験を経て金遺民として生き詩文を残しました。亡国の悲哀を凄絶にうたった作品は「喪乱詩」と呼ばれ高く評価されています。また、金時代の詩を集めた『中州集』を編纂し、金時代の歴史著述を志しました。正史『金史』は彼の草稿を多く用いており、そのためか文章の評価が高いそうです。
そんな元好問が若き日に、祭りに浮き立つ束の間の賑わいを詠んだ詩がこちら。
元夕 元好問
袨服華粧著処逢
六街灯火鬧児童
長袗我亦何為者
也在遊人笑語中
袨服と華粧とに著る処にて逢う
六つの街の灯火に児童鬧ぐ
長袗の我は亦た何為す者ぞ
也た遊人の笑語の中に在り
(井波律子『中国名詩集』岩波現代文庫 58頁)
〈超意訳〉
晴れ着で着飾った女性たちにあちらこちらで会う。
多くの町の提灯山を見て子供たちが喜んで大騒ぎ。
長いマントを羽織った私も何をしているかといえば、
やはり祭りを楽しむ人々の笑い声に入り混じっているのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●●○○●●◎
●○○●●○◎
○△●●○○●
●●○○●●◎
韻脚は「逢、童、中」で上平声一東。
以下は、語句解説です。
・元夕
陰暦一月十五日の夜。道教における三元大帝の一人である天官の誕生日とされ、北魏以降は祭日とされた。隋以降は、この日の前後三日(宋以降は五日)は灯籠を飾るようになった。
・袨服・華粧
晴れ着で着飾った様子。
・六街
都大路。長安の左右に六街が存在した事に因むと思われる。
・鬧
さわぐ、さわがしい
・長袗
長いマント姿。書生の服装。
・也
「また」とよむ。
・遊人
遊覧する人。
・笑語
笑いながら話をすること。
【参考文献】
井波律子『中国名詩集』岩波現代文庫
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『普及版 字通』平凡社
安藤孝行『唐詩唱和』明治書院
斎藤晌『李賀』集英社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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