2022年 03月 19日
春の大正天皇御製漢詩「春浦」
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世の中は不穏なあれこれが多いこの頃ですが、それでも春はお構いなしにやってきた感があります。今回も、春を題材にした大正天皇御製漢詩を見ていきたいと思います。皇太子時代の明治四十年(1907)の御製だそうで。お題は「春浦」。
春浦
春風海上暖方生
曲浦晴沙任步行
仰見芙蓉聳天半
夕陽殘雪兩分明
春風海上 暖 方に生ず
曲浦晴沙 歩に任せて行く
仰ぎ見る 芙蓉の天半に聳ゆるを
夕陽 残雪 両つながら分明
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 77頁)
〈超意訳〉
晴風が海の上でふいて、いままさに暖気が生じたところだ。
曲がりくねった海岸の光に照らされた砂の上を、足が動くに任せて進んでいる。
上を見上げると、富士山が空の真ん中に高く聳え立ち、
夕陽と富士山上に残る雪とがどちらもくっきりと目に入ってくるのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○●○●
●○○●●○◎
韻脚は「生、行、明」の下平声八庚。転句の下三文字は「挟平格」に相当するので七言絶句として問題ありません。
以下、語句解説です。
・方
ここでは「まさに」とよみます。
・曲浦
曲がりくねった形の海岸。
・晴沙
明るい光に照らされた砂。
・芙蓉
ここでは「芙蓉峰」、すなわち富士山のこと。植物の芙蓉はアオイ科の落葉低木で、夏から秋にかけて淡紅色の大きな五弁花をつけ一日で萎む。ただし蓮の花を指すこともある。
・天半
空の中央。
・分明
はっきり、くっきりしている。
この詩が詠まれた年代としては、世の中が色々あった後に一息ついたころといえるでしょうか。現代も、心置きなく春を楽しめる世の中に、早くなってほしいものです。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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by trushbasket
| 2022-03-19 13:31
| NF








