2022年 03月 31日
<読書案内>細川重男『論考 日本中世史』~歴史家エッセイの面白さとありがたさ~
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読書をしようと思っても、しっかりしたものを手に取る気力はない。手軽にめくれるものがあるとありがたい。そんな気分の時は、どうしてもあります。無論、そんな気分ばかりではいかんのですが。という訳で、手軽に読めて、なおかつ信頼性の高いものがあれば。そんな欲張った事を思ったりしますが、思うに、プロの歴史研究家によるエッセイ集は歴史好きにとっては割とそうした条件を満たすのではないでしょうか。これまでもそうしたエッセイ集をいくつかご紹介してきましたが、今回触れるのは細川重男著、日本史史料研究会監修『論考 日本中世史 武士たちの行動・武士たちの思想』(文学通信)。いかめしそうなタイトルとは裏腹に、中身は取っつきやすいエッセイ集です。
細川先生は鎌倉時代が専門で、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が好評なのもあって歴史好きの間では注目が集まっている一人と言えるかと思います。さて、そんな細川先生がエッセイでどんなお話をしているかと言えば。古文書の内容紹介、誤解を招く歴史用語の解説、現代では理解できない当時の価値観に関する解説といった真面目度の高いものもあり。古文書から読み取れる発信者のブチ切れ具合や諦念といった感情の動きやら、粗暴・自由奔放・野放図に生き抜いて歴史に一陣の嵐を残した面々の話やらといった歴史上の面白い逸話の紹介あり。文献を参照してひょんなきっかけで思わぬ気付きをした時の喜び、昔の人の諱を推定・確定する難しさ、自説の誤りが判明した時はそれを修正するのも研究活動の一つという話、研究発表時の心得といった研究現場に由来する話あり。中には、流行歌を元ネタに歴史ネタをいじった替え歌までも。
歴史研究者としての誠実さは守りつつ、「読者に歴史を楽しんでもらいたい」という思いを根底に感じる一冊。まえがき、あとがきはニヤリとさせられました。日本中世史好きなら、手に取ってみる価値はあるかと思います。
by trushbasket
| 2022-03-31 22:16
| NF








