2022年 04月 07日
董卓と劉備の共通点?in 吉川英治『三国志』
|
この頃、ふと吉川英治『三国志』を読み返す事がありました。御存じの方も多いでしょうが、横山光輝『三国志』の基になった作品でもあり、我が国における三国志人気に大きな貢献をした存在の一つです。
で、読み返していて気が付いた、割とどうでもよいこと。董卓と劉備という、世代もイメージも違う二人の群雄に関する、共通点と言えなくもない事についてです。この二人、「敵として立ちふさがった若き猛将」に対し「敵にするのは惜しい」との考えから李姓の人を使者として口説かせその猛将を配下に迎え入れた、という経験を持っているのです。すなわち、李粛に呂布を口説かせて味方にした董卓と、李恢に馬超を説得させ自陣営に迎え入れた劉備。
まあ、乱世というのは有為の人材を集めてなんぼですから、敵でも惜しむべき人材を味方に引き入れる努力はどこもしていますので、「だから何だ」といってしまえばそれまでの話。ただ、ちょっとおもしろいと思ったのは、口説き文句が双方とも何だか似ている事でした。
李粛が天下の英雄は誰かと呂布に問われて言った言葉は、
「賢を敬い、士に篤く、寛仁徳望を兼備している英傑といえば董卓をおいては、ほかに人物はない。必ずや将来大業をなす人はまずあの将軍だろうな」
(吉川英治『三国志 桃園の巻』)
というもの。
そして話は進んで、李恢が馬超に対して劉備を称えていった言葉はこの通り。
玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。(吉川英治『三国志 図南の巻』)
内容が実によく似ていますね。まあ、人材を勧誘する際に仕えるべき主君を称える決まり文句ではありましょう。仁徳があり器も大きく、賢人を重んじ、人材をよく用いるから大を為す人だ、という絶賛文句。それでも、董卓、劉備とイメージが違う二人が類似した表現で称えられていたのはちょっと面白いと思った次第。
※2022/4/9加筆
横山光輝『三国志』では、李粛の台詞はこうなってました。
力はある それでいて 部下には やさしい だから みんなが 慕ってくるの じゃないか(横山光輝『三国志4 乱世の奸雄』潮出版社 92頁)
だいぶわかりやすい言い方になってますね。一方で李恢の言葉は
玄徳は仁義あつく 賢人を敬い 士を大切にする ああいう人物は 必ず大成する(横山光輝『三国志35 成都攻略戦』潮出版社 180頁)
と吉川英治版そのままに近いものに。この間に横山三国志の想定読者年齢が上がったとか聞いたことがありますから、その影響もあるんでしょうな。
【参考文献】
「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/index.html)より
「吉川英治 三国志 桃園の巻」(https://www.aozora.gr.jp/cards/001562/files/52410_51061.html)
「吉川英治 三国志 図南の巻」(https://www.aozora.gr.jp/cards/001562/files/52417_51068.html)
横山光輝『三国志4 乱世の奸雄』潮出版社
横山光輝『三国志35 成都攻略戦』潮出版社
by trushbasket
| 2022-04-07 21:22
| NF








