2022年 07月 10日
袁枚『銷夏詩』〜清の大詩人、夏をうたう〜
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色々と騒がしく嘆かわしい世情ですが、あえて、今回も平常運転記事といたします。
本格的に夏になってきました。今週は清詩に関する本をご紹介しましたので、その縁で清詩人による夏の詩を取り上げようかと。お題は袁枚『銷夏詩』。
袁枚(1716-1797)は、清前期の詩人。字は子才、号は随園。浙江省銭塘県出身です。乾隆四年(1739)に進士に及第し、各地の知事を歴任した治績を挙げましたが同二十年(1755)に父の喪に服するのを理由として38歳で引退。以後は83歳で没するまで在野の詩人として活動しています。
乾隆時代を代表する大詩人とされ、その名声は文筆活動によって豪奢な生活を賄えるレベルだったと言われます。そのためか食通としても知られ、料理書『随園食単』をも残しています。「古人の模倣や技巧に流れるのでなく、性情の流れるままに言葉を紡ぐべきだ」という性霊説を唱えています。
今回取り上げる『銷夏詩』は、在野詩人となって間もない頃のものと思しい作品です。では、見ていきましょう。
銷夏詩
不著衣冠近半年
水雲深處抱花眠
平生自想無官樂
第一驕人六月天
衣冠を著けざること半年に近く
水雲深き処花を抱いて眠る
平生自ら想ふ無官の楽
第一人に驕る六月の天
(内田泉之助監修 村山吉廣編『中国の名詩鑑賞10清詩』明治書院 60頁)
〈超意訳〉
宮仕えをやめて衣冠を身につけなくて良くなってから半年近くになり、
自然豊かな環境で花に包まれて眠る暮らしをしている。
日頃から憧れてきた宮仕えせぬ隠遁生活の楽しみを、
今や何よりも他人に誇る事ができる夏六月である事よ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●●○○●●◎
●○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
韻脚は「年、眠、天」の下平声一先。
以下は、語句解説です。
・銷夏
暑さしのぎ。
・著
身につける。ここでは「着」と同様。
・衣冠
衣服と冠、転じて天子に仕える高貴な人。
・水雲
水と雲、転じて大自然。
・無官
官職についていない。
・第一
最も主要であること。
・驕
誇りに思う。
【参考文献】
内田泉之助監修 村山吉廣編『中国の名詩鑑賞10清詩』明治書院
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『中日辞典 第三版』小学館
『大辞林』三省堂
『普及版 字通』平凡社
『動植物名よみかた辞典 普及版』日外アソシエーツ
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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