「虫干」と「井戸替」〜馴染みの薄くなった夏の風物詩〜
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すっかり、暑さも夏本番。天候は降ったり晴れたりと定まりませんけど。
という訳で、かつて夏の風物詩でしたが今は馴染みが薄くなったものについて今回少しお話ししようかと。
まずは、「虫干」。書籍や衣類、掛軸、調度などを保管場所から取り出して風を通す事で黴や虫の害を防ぎ、必要に応じて修繕する事を指します。夏干し、土用干しとも言うように夏の土用(※)に行われるのが通例です。
※土用
春夏秋冬をそれぞれ木火金土に分け、それぞれの季節の終わり18日間が「土」に相当する。この時期を「土用」といい、これが過ぎると次の季節に移る。現在では夏の土用(立秋前の18日間)だけが用いられている。
古くは曝涼と呼ばれ、すでに平安期には正倉院宝物に対して行われていた記録が残されています。現在でも正倉院だけでなく多くの寺院で蔵物の曝涼が行われているそうです。そして『延喜式』には仏像や経典の曝涼は七月上旬から八月上旬と定められているとか。
夏の土用が選ばれるのは、湿気の多い梅雨が明け程よく乾燥しているからだとか。
具体的には、午前九時頃から午後三時頃にかけて、窓を開け放って通気性を良くし、風の向きに網を張って干すのが衣類の虫干だとか。そして塵を払い畳んで鬱金の風呂敷などに包み防虫剤を入れ保存だそうで。
なお、夏の季語であるこの虫干ですが、夏は熱気を含むので寧ろ空気がより乾燥した秋の晴れが二日続いた時期の方がベターである、とこの頃は言われているようです。
もう一つ、「井戸替」について。上水道が普及した現在では縁遠くなりましたが、生活用水を井戸に依っていた時代には、夏に井戸の水を汲み出して中を掃除するメンテナンス作業が定期的に行われていたのだそうで。こちらも、夏の季語。
【参考文献】
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
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