2022年 09月 04日
歌枕「鏡山」「三上山」〜近江の名山二つ〜
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恒例化している歌枕シリーズ。今回は、『続後撰和歌集』巻第二十、賀歌から例となる和歌をご紹介するところから。
九月十三夜十首歌合に名所月 祝部成茂
神もみよ くもりなき世の 鏡山
いのるかひある 月ぞさやけき
〈超意訳〉
神も御照覧あれ、曇りない鏡のようたすっきり晴れわたる世の鏡山を。神に祈った甲斐あって、月も鮮やかに見えている事だ。
天仁元年大嘗会悠紀の御屏風に三神山 前中納言匡房
あさみどり 三かみの山の 春霞
立や千とせの 初なるらん
〈超意訳〉
朝緑色に美しく映える三上山にたつ春霞は、これから始まる我が君の御代が長久である事を寿いでいるのだろうか。
かがみ山
くもりなき 君が御代には 鏡山
のどけき月の 影とみえけり
〈超意訳〉
鏡山だけに、鏡のように曇りのない我が君の御代を寿いで、月の光がうららかに輝いて見えるのである。
仁治三年悠紀風俗歌三神山 前参議為長
いにしへに 名をのみききて もとめけむ
みかみの山は これぞ其山
〈超意訳〉
昔から名前だけ聞き知って探し求めていた三上山というのは、まさしくこの山なのだ。
ここで登場した「鏡山」「三上山」が今回のお題です。
鏡山は、近江国(滋賀県)南部の現在で言う野洲市と蒲生郡竜王町の境にある山です。標高は385メートル。山麓に鏡宿があり、交通の要所として『吾妻鏡』『平家物語』『太平記』にも名前が登場します。源義経が奥州へ下る途中でこの宿で元服したという伝承は知られてしますし、源頼朝が東大寺大仏開眼供養のため上洛した際や宗尊親王が鎌倉へ向かう際もここで宿をとっています。
そんな交通の要所に程近く馴染み深いからか、古くから鏡山は歌枕とされ
『古今和歌集』雑上
鏡山 いざたちよりて みてゆかん
年へぬる身は おいやしぬると
〈超意訳〉
さて、鏡山に立ち寄ってみて行こう。「鏡」だけに、歳を取った我が身が見た目も老いぼれているかどうか映し出してくれようから。
などの歌が残されています。
三上山も、近江国の山。野洲市にあり標高は432メートル。「御上山」「三神山」などの宛字をされる事もあります。その美しい山容から近江富士の名でも知られ、やはり歌枕とされました。古くから農耕の神が宿る山とされ、現在も御上神社として信仰を集めています。藤原秀郷が大百足を退治したという伝説でも知られる山です。
【参考文献】
『日本大百科全書』小学館
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
戸部民夫『起源からご利益まで!『日本の霊山』がよくわかる本』PHP研究所
『続後撰和歌集 下』吉田四郎右衛門尉刊行
※2022/11/6 重複部分を消去
参考文献:
by trushbasket
| 2022-09-04 10:48
| NF








