2022年 11月 13日
歌枕「飛鳥川」~定めなき世、を表す事も~
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今回も歌枕シリーズ。お題は「飛鳥川」です。飛鳥川は高取山を源流とし、北へ向かって橿原市で畝傍山と天香具山の間を流れ、安堵町で大和川と合流する川。長さ28km。古代には明日香村祝戸から橿原市飛騨町あたりを特に「飛鳥川」と呼んだようです。
『万葉集』時代は「明日」にかける言葉としても用いられたり、水嵩の多さから「恋の妨げ」の喩えとされたりもしました。平安期以降は流路の変化が激しく、名前に「あす」とあるのもあってか「明日をも知れぬ定めなき世」の喩えとして詠まれるケースが目立ってきます。
という訳で今回の説明は以上。ここからは、事例を見ていきましょう。
まずは『万葉集』から。
明日香川 明日も渡らむ 石橋の
遠き心は 思ほえぬかも
〈超意訳〉
飛鳥川を明日も渡り会いに行きましょう。貴方に対し、飛び石のように飛び飛びで距離ある心でいる事は、私には考えられない。
・石橋
ここでは、川や池に石を飛び飛びに渡して伝っているようにしたもの。
次に『古今和歌集』。
世の中は 何か常なる あすか川
昨日の淵ぞ 今日は瀬になる
〈超意訳〉
世の中は、不変のものが何かあるというのだろうか。飛鳥川の昨日は深い淵だった所が、今日は浅瀬に変わっている。明日はどうなっているやら知れたものでない。
・淵
水を深く湛えたところ。
・瀬
川の流れが浅く歩いて渡れる所。
そして『続古今和歌集』巻第六 冬歌から。
貞永元年百首歌よみ侍けるに氷を 光明峯寺入道前摂政左大臣
さえくれぬ けふ吹風に あすか川
七瀬のよどや こほりはてなん
〈超意訳〉
冷え込んで日が暮れた今日、吹いた風で飛鳥川の祓いをする七ヶ所の瀬の澱みも凍りついてしまってあるだろう。
・よど
水が流れないで澱むこと。
法印尊海すすめ侍ける春日社十五首に冬歌 大納言良教
渕瀬こそ さだめなからめ 飛鳥河
こほりてかかる 浪の音かな
〈超意訳〉
淵になるか瀬になるか、定まらぬ飛鳥川よ。
凍った所にかかる波の音が聞こえる。
三首歌講じ侍し次に河氷を 太上天皇
あすか河 ゆくせの水の うす氷
こころありてや よどみそむらん
〈超意訳〉
飛鳥川を流れる瀬の水に薄く氷がかかって、思う所ありげに澱み始めている。
【参考文献】
『日本大百科全書』小学館
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
『続古今和歌集 中』吉田四郎右衛門尉刊行
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