2022年 12月 12日
大正天皇御製漢詩『雪意』
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今回は、久々に大正天皇御製漢詩を。冬になってきた感じがありますので、雪を題材にした五言律詩の大正四年の御製『雪意』を見ていこうかと。
雪意
雪意生天外
同雲影欲昏
梅花唇尙澁
爐火手宜溫
樹上禽聲罷
階前犬影奔
題詩呵凍筆
轉覺潔吟魂
雪意 天外に生じ
同雲 影昏からんと欲す
梅花 唇尚お渋り
炉火 手宜しく温むべし
樹上 禽声罷み
階前 犬影奔る
詩を題して 凍筆を呵し
転た覚ゆ 吟魂潔きを
(石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店 218頁)
〈超意訳〉
遥かな空は雪が降りそうな雰囲気で、
雪雲が光を遮って暗くなってきた。
梅の花はまだ綻ばせそうになく、
炉の火で手を温めると心地よいような寒さ。
木の上で鳴いていた鳥の声もやみ、
階段の前では犬が駆け回る姿が見える。
題に沿って詩を作ろうと、先が凍りついた筆に息を吹きかけて温めていると、
詩情がますますすっきり冴え渡ってくるのを感じる。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●●○○●
○○●●◎
○○○●●
○●●○◎
●●○○●
○○●●◎
●○○●●
●●●○◎
韻脚は「昏、温、奔、魂」の上平声十三元。
以下は、語句解説です。
・雪意
雪が降りそうな空模様。
・天外
はるかな空。きわめて高いところ。
・同雲
雪雲。どんよりして一つの色だからだという。
・影
ここでは「光」。「犬影」の時は「目に見えるものの姿形」。
・唇
ここでは、花びらの意か。
・渋
ここでは、滑らかに動かない、の意。
・題詩
定まった題に沿って詩を作る。
・呵
ここでは、「息を吹きかけて温める」。
・凍筆
寒さで先端が凍った筆。
・転
うたた。ますます。
・吟魂
詩人の心。詩情。
【参考文献】
石川忠久編著『大正天皇漢詩集』大修館書店
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『中日辞典 第三版』小学館
『大辞林』三省堂
『普及版 字通』平凡社
『動植物名よみかた辞典 普及版』日外アソシエーツ
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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by trushbasket
| 2022-12-12 21:23
| NF








