2023年 01月 09日
恋歌と役行者伝説
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今回もまた、『続古今和歌集』巻第十二 恋歌二から題材を。
女につかはしける 前中納言匡房
かつらぎの よるの契は かたくとも
ふみだにみせよ くめの岩橋
〈超意訳〉
葛城山の神の「夜にのみ働く」という契りは固いといっても、久米の岩橋に足を踏み入れる位はしてほしいのと同じく。貴方と夜に逢おうという約束は難しいにせよ、恋文の返事くらいはしてくれまいか。
この歌の「葛城」や「久米の岩橋」という言葉についてが今回のテーマ。これらは、役行者伝説が元ネタです。葛城山は、奈良県と大阪府の境界にある金剛山地の山の一つで修験道最古の霊場といわれています。伝説によると、役行者はこの葛城山の神「一言主神」に命令し、葛城山から吉野金峯山まで橋を架けようとしました。しかし葛城の神が夜しか働かない縛りがあったのもあり、完成しなかったとされています。この話は、『日本霊異記』上巻二八話や『今昔物語集』巻一一第三話で語られているとか。
さて。和歌の世界では、この事例以外にも『千載和歌集』雑上にある源師頼の歌で
かづらぎや 渡しもはてぬ ものゆゑに
くめの岩ばし 苔おひにけり
〈超意訳〉
葛城の久米岩橋は、渡し切る事ができなかったものだから、人通りもなく苔が生えてしまった。
なんてのもあります。和歌の世界では、「男女の契りが成就しない」喩えによく用いられるのだそうです。冒頭の匡房の歌がまさにそうでしたね。恋歌に用いられる地名も色々あるものです。
【参考文献】
『続古今和歌集 中』吉田四郎右衛門尉刊行
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
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by trushbasket
| 2023-01-09 19:48
| NF








