和歌に出てくる「藤衣」とは〜字面に惹かれて良く知らずに使わないように備忘録〜
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2023年 01月 31日
和歌などで時に見る「藤衣」。何も知らず見ると、花の美しい「藤」と「衣」の掛け合わせ、何となく風流に思えててしまいます。しかし意味を知らず知ったかぶりしてうっかり使うと、ちょっと拙い事になるかもしれない。今回はそんなお話。 何がまずいかというのを理解していただくため、とりあえず用例をいくつか。 『古今和歌集』哀傷にある壬生忠岑の歌に ふぢ衣 はつるるいとは わび人の 涙の玉の 緒とぞなりぬる <超意訳> 喪服である粗末な藤衣の解れた糸は、それを着て悲しみに沈む私の涙の玉を繋ぐ紐となるだろう。 『源氏物語』夕霧巻には 藤衣 露けき 秋の山びとは 鹿のなく音に 音をぞそへつる <超意訳> 藤衣を着て、露が下りる秋山で涙ながらに過ごす私は、鹿が相手を想い鳴く声に合わせて、亡きあの人を想い泣き声をあげることだ。 なんてのも。 そして『続古今和歌集』巻第十六 哀傷歌には、 おやの思ひに侍けるころ 惟宗忠景 をく露を いかにしぼれど 藤衣 ほさぬたもとに 秋のきぬらん <超意訳> 藤衣に降りる露のように落ちる涙をどれほどしぼったとしても、乾く事のない袂に秋が来たようだ。 宣陽門院かくれ給にけるとしの秋のくれ伏見にまいりてよみ侍ける 従三位忠兼 藤衣 袖はほすべき ひまもなし 涙しぐるる 秋のわかれに <超意訳> 藤衣の袖は、乾く暇すらない。時雨のように涙が落ちる、この秋の死別には。 いずれも、亡き人を偲ぶ悲しみの歌、という事はお分かりいただけるかと。 解説を加えていきますと。「藤衣」とは「藤の花をあしらった美しい衣」とかではなく藤や葛などツル性の植物繊維で織った衣で、折り目が荒く肌触りが固い事から粗末な布とみなされていました。なので貧しい人々が着るグレードの低いものとされており、貴族階級にとっては縁が生じるのは身をやつす喪服という形でだったようです。それもあってか、中世などの和歌では「喪服」という意味合いを持ち亡き人を偲ぶ哀傷歌で登場する言葉となったそうで。まあ実際には喪服はやがて麻布で作られるようになったそうですが、それらも「藤衣」と呼ばれたようです。 字面が華麗なので、つい知ったかぶりして格好付けて使いたくなりますが、うっかり妙なシチュエーションで使うと大恥かくな、危ない危ない…という事で備忘録代わりに。 【参考文献】 『精選版 日本国語大辞典』小学館 『大辞泉』小学館 『続古今和歌集 下』吉田四郎右衛門尉刊行 関連記事:
by trushbasket
| 2023-01-31 22:18
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