歌枕「布引の滝」〜新神戸駅から徒歩5分〜
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久々に、今回は歌枕シリーズ。日本有数の大都市の、新幹線全列車が停車する主要駅から歩いてすぐだという場所です。即ち、「布引の滝」。
布引の滝の所在地は、神戸市中央区の六甲山地。生田川の中流にある布引谷の花崗岩にかかる雄滝、夫婦滝、鼓ヶ滝、雌滝を総称して「布引の滝」と呼ぶそうです。古くは役小角が修行の場を開いたともされ、その後も景勝地として多くの和歌に詠まれました。『伊勢物語』で「白絹に岩を包めたらむやうになむありける」とあるように、岩肌を水が落ちる様が白布のようである事からこの名がついたとされています。
この地を題材にした和歌としては、例えば『続古今和歌集』巻第十八雑歌中にある
月照瀧水といふこころを
後京極摂政前太政大臣
山人の 衣なるらし しろたへの
月にさらせる 布引のたき
〈超意訳〉
どうやら山に棲む人の衣であるらしい。真っ白な、月の光に晒したような布引の滝は。
布引瀧を 祭主輔親
水上は いづこなるらん しら雲の
なかよりおつる 布ひきの瀧
〈超意訳〉
その上流はどこにあるのだろう、まるで白雲の中から落ちてきたかのように高い布引の滝は。
といったものが挙げられます。
ちなみに「後京極摂政前太政大臣」とは藤原良経(1169-1206)の事。良経は九条兼実の子で、名称から分かる通り摂政や太政大臣に栄達し娘(東一条院)は順徳天皇の中宮となるものの、若くして世をさっています。歌人としても名高く、後鳥羽上皇から和歌所寄人とされ『新古今和歌集』序をものしています。
この布引の滝、新神戸駅から北方1kmという近さだそうで。そういえば新神戸駅は、東西はトンネルですぐ北は山肌という位置関係。六甲山の裾にある駅だという事が実感できる話ですね。ちなみに神戸の中心地である三ノ宮へも地下鉄一駅ですから、風光明媚な歌枕の地としては確かに交通至便と言えそうです。
【参考文献】
『続古今和歌集 下』吉田四郎右衛門尉刊行
『日本大百科全書』小学館
『大辞泉』小学館
『デジタル大辞泉プラス』小学館
関連記事:
「歌枕「大堰川」〜都から程近い、急流と紅葉で知られた名所〜」
ここも滝で知られた歌枕。こちらは、良経の子である道家が歌を詠んでます。
「大正天皇御製漢詩『 李白觀瀑圖』〜附 李白『 望廬山瀑布』 〜」
上で挙げた祭主輔親の歌は、この記事にある李白の詩を連想させるものが。
「主要都市の代表駅と地下鉄~東京、市営地下鉄のある主要政令市~」
関連サイト:
「デイリーポータルZ」(http://portal.nifty.com)より
「JR新神戸駅から徒歩5分の滝を見に行った」(https://dailyportalz.jp/kiji/170417199356)
新神戸駅から徒歩5分なのは雌滝のようです。
「東西2大降りない「新」駅で降りてみる」(https://dailyportalz.jp/kiji/120823157051)
上で引用した藤原良経の歌は現地で石碑に刻まれています。これを見た筆者の「やばい。藤原とかが歌詠んじゃうのはやばい。本気の風光明媚だ。」という感想は言い得て妙。








