2023年 04月 05日
歌道を象徴する言葉としての「八雲たつ」
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夜久毛多都(やくもたつ) 出雲八重垣 妻籠みに
八重垣作る その八重垣を
『古事記』が伝える素盞嗚尊によるこの歌をご存知の方も多いでしょう。この「八雲たつ」という言葉、「多くの雲が立ち上る」という意味。雲は生命力の象徴とされ、生命力盛んな国というニュアンスで「出雲」にかけて用いられます。だから「出雲」の地を象徴する言葉と言えます。と言いますか、そもそもが「出雲」という言葉自体もまた同様な意味合いで名付けられたんだとか。
閑話休題。この「八雲たつ」という言葉、後世には出雲を離れ和歌の道に絡めて用いられる事例も見られるようです。一例を挙げますと、『続古今和歌集』巻第十九 雑歌下
左大将に侍けるとき家の百首歌に
後京極摂政前太政大臣
八雲たつ いづもやへがき けふまでも
むかしのあとは へだてざりけり
〈超意訳〉
素盞嗚尊が「八雲たつ いづもやへがき…」と詠んだ昔から今日までも、和歌の道は隔てなく続いている。
十首歌の中に 前内大臣 基
八雲たつ 道はふかきを あさか山
あさくも人の おもひいる哉
〈超意訳〉
素盞嗚尊に始まる和歌の道は奥深いものを、浅はかにも私の様なものが思い入れてしまったものだよ。
ちなみに安積山についてはこちらを。「浅い」という言葉にひっかけて連想させる用法もあるようで、今回もその範疇でしょうな。
素盞嗚尊の歌が『古今和歌集』仮名序で「人の世となりてすさのをのみことよりぞみそもじあまりひともじはよみける」と最古の短歌として引き合いに出された事から、「八雲たつ」という語句自体も歌道を示す意味合いで用いられるようになったものと思われます。
【参考文献】
『続古今和歌集 下』吉田四郎右衛門尉刊行
『古今和歌集 上』吉田四郎右衛門尉刊行
『精選版 日本国語大辞典』小学館
谷知子『和歌文学の基礎知識』角川学芸出版
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by trushbasket
| 2023-04-05 23:38
| NF








