二字熟語「野望」の意外な意味〜漢文漢詩で出てきた時は気をつけて〜
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突然ですが、「野望」という二字熟語を見たらどんな意味を思い浮かべますか?
大抵の方は、「のし上がってやろう」「勝ち上がってやろう」という意思、を連想するのではないでしょうか。有名なところでは、歴史シミュレーションゲームシリーズ『信長の野望』などはまさにその意味で用いられていますね。辞書的な定義だと「分不相応な大きな望み。身の程を知らない大それた望み。」(『精選版 日本国語大辞典』小学館)なんて書かれてます。
ところがこれ、この辞書では二番目に書かれた意味なのです。『大辞泉』ではこの意味だけだったりするんですけどね。では、『精選版 日本国語大辞典』の「野望」一番目にはどんな意味合いが書かれているのでしょう。
その前に、ここで平安貴族藤原行成(978-1028)の日記『権記』長保元年九月一二日の記事について。そこには、「与中将同車詣左府。左府野望」とあります。中将と一緒に牛車で左大臣を訪問した、という事でしょうね。で、問題はこの後の「左府野望」。左大臣が「大それた望みを抱いた」、という意味ではなさそうです。さて、ここで先ほど触れた『日本国語大辞典』「野望」の項目にある一番目の意味はと見ると…「山野に出て遊宴すること。野あそび。」とありますね。左大臣が野遊びした、という事でしょうね。余談ながら、この時点での左大臣といえば藤原道長でしょうね、おそらくは。
この「野望」とは、文字通り「野を望む」という意味でしょう。ここでいう「望む」とは「遠く離れてながめやること。遠く見やること。」と言ったら意味かと。『唐詩選解』でも「野望」という題の漢詩に「野外ヘ出テソコラヲ望ミ見テ作ル」と解説が入ってます。
という訳で。漢文漢詩で「野望」という言葉が出た時は、「山野に出てその景色を眺望する」といった意味を念頭に置くと良さそうですね。今回はそんなお話。
【参考文献】
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
『日本大百科全書』小学館
『日本人名大辞典』講談社
『唐詩選解 中』小林新兵衛
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