2023年 06月 29日
歌枕「石見潟」〜「浦廻」から転じて…〜
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今回も歌枕シリーズ、お題は「石見潟」。「石見潟」とは、石見国の海岸の事で、現代で言えば島根県江津市から浜田市にかけてに相当するそうです。「潟」という言葉には「砂州によって海と分離した湖沼」というイメージがありますが、「湾、入り江」といった意味もあるそうです。この「石見潟」、「浦廻」(うらみ)という言葉と縁が深い事から「恨み」という言葉の枕詞として和歌で用いられるようになったとか。
さて。この「浦廻」とは、「海岸が曲がって入り組んだ所」なんだそうで。浦回と表記したりもします。なお、浦曲と書いて「うらま」と読む言葉も同じ意味ですが、これは『万葉集』で「宇良未」と表記された「未」が「末」と誤読された事に由来するそうです。まあ、石見の海岸が入江と結びついて古来から連想され
さて。入江のせいで「恨み」の枕詞にされてしまった石見潟ですが。「恨み」が詠み込まれる歌といえはば、基本は恋歌。つれない相手に呼びかける歌が多いイメージです。
例えば『拾遺和歌集』恋第五には
つらけれど 人には言はず 石見潟
うらみぞ深き 心一つに
〈超意訳〉
辛くはあるけれど、他人に漏らさず我が心一つに留まる恨めしい気持ちは深い。石見潟の浦廻のように。
『続拾遺和歌集』巻第十五 恋歌五には
題しらず 藤原為綱朝臣
いかにせん 袖のみぬれて 石見がた
いはぬうらみは しる人もなし
〈超意訳〉
どうしたものか、石見潟の浦廻で濡れたかのように袖は涙で濡れている。あの人への、口には出せぬ無念の思いを知る人はいない。
「石見」(いはみ)という言葉も「いはず」に近いので「言葉に出せぬ恨み」なんてニュアンスを醸し出させているようです。
【参考文献】
『続拾遺和歌集 下』吉田四郎右衛門尉刊行
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
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※2023/7/27 参考文献の版元書き忘れを追加
by trushbasket
| 2023-06-29 19:56
| NF








