2023年 08月 22日
歌枕「井手の里」〜山吹の里~
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今回も性懲りも無く歌枕シリーズ、お題は「井手の里」です。井手の里はその名の通り、現在で言う京都府綴喜那井手町大字井手のあたりとされています。玉川下流の扇状地になります。古来より橘諸兄が別荘・相楽別業を置いたり円提寺を建立するなど、貴族階級にも知られた土地でした。それもあってか和歌の題材にもされ、山吹や蛙と組み合わせて詠まれたそうです。
今参照している『新後撰和歌集』巻第二 春下にも、
山吹の まがきに花の さく比や
井手の里人 春をしるらん
〈超意訳〉
籬に絡んだ山吹に花が咲く頃だろうか。井手の里の人たちも、春が来たと感じている事だろう。
まがき(籬)とは、竹や柴などで目をあらく編んだ垣の事です。
百首歌召ける時 崇徳院御製
款冬の 花のゆかりに あやなくも
井ての里人 むつまじき哉
〈超意訳〉
山吹の花が取り結んだ縁であろうか、理屈に合わぬようではあるが、井手の里人に心が惹かれることよ。
といった歌が。
「款冬」とは山吹の異名としてここでは用いられています。だからこの歌では「やまぶき」と読む訳ですね。なお、蕗や石蕗の異名である事もあるそうです。ややこしい。
「あやなし」とは「文無し」と書き「理屈に合わない」「いわれがない」といった意味です。「むつまじ」とは「仲が良い」という意味以外にも「心惹かれる」といった意味もあるようですな。
とりあえず、井手の里が山吹の花と絡めて詠まれる実例を二つ、『新後撰和歌集』からご紹介いたしました。
【参考文献】
『新後撰和歌集 上』
『日本歴史地名大系』平凡社
『精選版 日本国語大辞典』小学館
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by trushbasket
| 2023-08-22 21:28
| NF








