2023年 08月 28日
歌枕「河口関」「敷津浦」
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今回の歌枕シリーズは、二つ。
まずは、『新後撰和歌集』巻第五 秋下からこの歌を。
関月といへる心を 後嵯峨院御製
曇なく 月もれとてや 河口の
関のあらがき まどをなるらん
〈超意訳〉
曇なく照らす月の光が漏れているとは、河口関の垣根はまるで粗末な衣のように、隙間の荒いことだ。
「あらがき」はここでは「荒垣」、「まどを」は「間遠」。荒垣とは柱と貫の間が荒くまばらな垣根の事で、「間遠」はここでは「間遠の衣」すなわち織り目の荒い粗末な衣を念頭に置いていると思われます。
さて、この歌で登場した河口関は、またの名を岫田関(くきだのせき)ともいい大和と伊勢を結ぶ古代の関所。現在の三重県津市にあります。
では、次の歌枕。同じく『新後撰和歌集』巻第五 秋下にはこんな歌もあります。
建仁元年八月十五夜和歌所撰歌合に月前松風といへることを 皇太后宮大夫俊成
月の影 しきつの浦の 松風に
むすぶ氷を よする波かな
〈超意訳〉
月が光を照らす敷津浦には風も松にふきつけ、気温が冷たくなったせいで海面にできた氷を波が岸辺に浮き寄せていることだ。
敷津浦は摂津国東成郡敷津村(大阪市住之江区)あたりの海岸で、『万葉集』にも
住吉の 敷津之浦の 名告藻(なのりそ)の
名は告りてしを 逢はなくもあやし
〈超意訳〉
住吉の敷津浦に生える「なのりそ」のように、私はあの人に名を告げたというのに、あの人は逢瀬に応じてくれないのはどういう事だ。
という歌があるように古くから知られた名所だったようです。なお、「なのりそ」とは海藻ホンダワラのこと。「な告りそ」(名乗った)という意味を込めて用いられるそうです。
【参考文献】
『新後撰和歌集 上』
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『百科事典マイペディア』平凡社
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by trushbasket
| 2023-08-28 22:17
| NF








