直江兼続『織女惜別』〜季節外れな記事ですが、一応は次回への引きです〜
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NHK大河ドラマの公式サイト、たまになかなか興味深い趣向をしてくれる事があります。今年で言えば、『どうする家康』初回で野村萬斎さん演じる今川義元の舞を完全版で公開してくれたのは記憶に新しいところ。
関連サイト:
「大河ドラマ『どうする家康』」(https://www.nhk.or.jp/ieyasu/)
「今川義元の舞〈完全版〉」(https://www.nhk.or.jp/ieyasu/video/23.html)
さて、今となっては昔の話。2016年の大河『真田丸』でも、そんな粋な企画がいくつかありました。その一つに、上杉景勝の重臣直江兼続を演じる村上新吾さんが兼続の七言絶句を朗読した事がありました。もはや『真田丸』サイトは消滅していますから、今回改めて当該する漢詩をご紹介してみようかと。…季節外れもよいところですけども。
織女惜別 直江兼続
二星何恨隔年逢
今夜連床散鬱胸
私語未終先灑涙
合歓枕下五更鐘
二星 何ぞ恨まん 年を隔てて逢うを
今夜 連床 鬱胸を散ず
私語 未だ終えざるに 先ず涙を灑ぐ
合歓 枕下 五更の鐘
(加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書 181頁)
〈超意訳〉
織姫彦星は、年一回しか逢えないのをどうして恨みに思う事があろうか。
今夜こうして寝床を並べて積もる想いを晴らす事ができるのだから。
ささめごとがまだ終わらぬうちに感極まって涙が溢れる。
喜びを交わす枕元に、夜明けを告げる鐘が聞こえてきた。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
●○○●●○◎
○●○○●●◎
○●●○○●●
●○●●●○◎
韻脚は「逢・胸・鐘」で上平声二冬。
以下は語句解説です。
・二星
二つの星。特に織女星と牽牛星を意味する事が多い。なお、俳句では「ふたつぼし」とよみ秋の季語である。
・鬱胸
胸中にわだかまる思い、特に不快感。
・散
気を晴らす。
・私語
ささめごと。ひそやかに話すこと。睦言。
・合歓
喜びを共にする事。特に恋人同士の契り。
・五更
一夜を五分した最後の時刻。季節によって多少のずれがあり、春は午前三時頃から五時頃まで、夏は午前二時頃から四時頃まで、秋は午前二時半すぎから五時頃まで、冬は午前三時二〇分すぎから六時頃まで。基本的に夜明けごろといえる。
さて、何故に季節外れなこの時期、この詩を殊更に話題に出してきたのか。実は、一応の理由があります。この詩の承句にある「鬱胸」という熟語、実は少々曲者。次回の記事で、そのお話を致そうかと思うのです。今回は、そのための引きという訳。では、その辺のお話をまた来週あたりに。
【参考文献】
加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
「日本漢字能力検定 漢字ペディア」(https://www.kanjipedia.jp)
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