2023年 12月 14日
今年も元禄赤穂事件を題材にした漢詩を紹介〜大塩平八郎『四十七士』
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今年も十二月十四日がやってきました。今は馴染みのない人も多いでしょうが、かつては元禄赤穂事件、いわゆる『忠臣蔵』における吉良邸討ち入りの日として知られた日です。
何年か前、確か元禄赤穂事件を題材にした漢詩を取り上げたかと思います。今年もそんな漢詩をご紹介しようかと。大塩平八郎(1793-1837)による『四十七士』という詩です。
大塩平八郎については、日本史の授業でも習う筈なのでご存知かと思いますが一応。徳川後期の陽明学者で、大坂で与力として務め退職後に私塾洗心洞を開き教育に力を注ぎました。天保の大飢饉で飢民救済を上申するも入れられず反乱を起こし大きな衝撃を世に残した人物です。そんな彼は元禄赤穂事件に何を思ったのか。見ていきましょう。
四十七士
臥薪嘗胆幾辛酸
一夜剣光映雪寒
四十七碑猶護主
凛然冷殺奸臣肝
臥薪嘗胆 幾辛酸
一夜 剣光 雪に映じて寒し
四十七碑 猶お主を護り
凛然 冷殺す奸臣の肝
(加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書 195頁)
〈超意訳〉
赤穂藩の旧臣たちは、主の仇を討つべくいかほど苦労したことか。
大願成就の夜、仇たる吉良上野介を討った刀は雪に照らされて冷ややかに光を放った。
この時の赤穂四十七士の墓碑は今も猶、主君を守るように立ち、
邪悪な心を持つ家臣を引き締めませ震え上がらせているのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
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韻脚は「酸、寒、肝」の上平声十四寒。承句の四字目が「孤平」になってたり、結句の下三文字が全部平声だったりと、絶句としては何だか変。陽明学者としても名を馳せた大塩がこの辺を知らない筈はないですし、どういう意図だったのやら。七言古詩と分類すべきなのか、どうなんでしょう。
以下は、語句解説です。
・臥薪嘗胆
屈辱を晴らすため耐え忍び苦労すること。春秋時代の呉と越の抗争において、呉王夫差が薪の上で寝てその痛みで相手への遺恨を忘れぬようにし、また越王勾践も敗北ののちは肝を舐めてその苦味で相手への遺恨を忘れぬようにしたという故事による。
・辛酸
辛い思い。
・剣光
つるぎの光。
・凛然
寒さが厳しいさま、もしくは、心の引き締まる様。
・冷殺
冷ややかな態度で相手の心を削ぐこと、冷たさで苦しめること。
・奸臣
邪悪な心を持った家臣。
生真面目に忠や義をうたい上げるこの一作、大塩らしいといえばいえるのかも。
【参考文献】
加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『故事成語を知る辞典』小学館
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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by trushbasket
| 2023-12-14 21:25
| NF








