2024年 01月 31日
歌枕「長等山」〜園城寺の背後、桜の名所〜
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今回は、また歌枕シリーズ。お題は「長等山」です。長等山は滋賀県大津市にあり、長良山、長柄山、志賀山とも呼ばれます。標高は354m、ちょうど園城寺の背後にあたる位置だそうです。東麓は桜の名所である事もあってか、古くから歌に詠まれてきました。有名なところでは『千載和歌集』に収められた平忠度の
さざなみや 志賀の都は 荒れにしを
むかしながらの 山桜かな
〈超意訳〉
琵琶湖の細波が立つ志賀にあったという、大津京は今は荒れ果ててしまったけれど、その辺りの長等で咲く山桜は昔のままだ。
という歌が挙げられるかと。「昔ながら」と「長等」がかけられている訳ですね。なお、余談ながらこの歌、有名な逸話があります。平忠度は平家一門の公達で、藤原俊成に和歌を学んだ人物でした。しかし源平合戦で平家が敗れ都落ちを余儀なくされた際、歌人としての名を残したいと自らの詠草を師俊成に託して落ちていったといいます。後に俊成が勅撰和歌集編者となった際、その意を汲んでこの歌を採用したそうです。ただし、平家が朝敵である事を憚り「詠人不知」という扱いだったそうですが。
話を戻しますと、他にも長等山を題材にした歌といえば『拾遺和歌集』にある大中臣頼宣の
さざなみの 長柄の山の 長らへて
楽しかるべき 君が御代かな
〈超意訳〉
我が君の治世は、琵琶湖の細波が立つ長等山のように長らえる、楽しいものになることでしょう。
なんてのもあります。
今手元で見ている『玉葉和歌集』でら巻第二 春歌下に
花歌とてよめる 権中納言師俊
ささ波や なからの山の 花さかり
志賀の浦風 ふかすもあらなん
〈超意訳〉
長等山では桜の花が満開なので、志賀の浦の風よ、吹かないでほしいものだ。
なんてのがありました。やはり「さざなみ」「花」がキーワードなんですな。
「さざなみや」はこの「長等」をはじめ「近江」「志賀」「三井」など琵琶湖南西岸を思わせる地名にかかる枕詞です。なお、「寄る」とか「浜」にもかかるそうです。
歌枕シリーズも、だいぶ数が増えてきましたな。一度、雑記なりで整理しないと、とは思っているのですが。
【参考文献】
『玉葉和歌集 上之一』吉田四郎右衛門尉刊行
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『朝日歴史人物事典』朝日新聞出版
『日本大百科全書』小学館
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『学研全訳古語辞典』学研
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by trushbasket
| 2024-01-31 21:51
| NF








