2024年 03月 12日
歌枕「高円山」〜奈良の都の南東、秋の萩と月〜
|
久々に歌枕シリーズ。今回は「高円山」がテーマです。
今読み進めている『玉葉和歌集』巻第四 秋歌上を見ていますと。
題しらず 中納言家持
高円の 野べの秋はぎ 此比の
暁露に 咲にけるかも
〈超意訳〉
高円山の野辺に生える秋萩は、この頃の明け方に結ぶ露の中に咲いたことだよ。
宝治百首歌めされける時萩露を
後嵯峨院御製
白露も こぼれて匂ふ 高円の
野べの秋はぎ 今さかりなり
〈超意訳〉
高円山の野辺に咲く秋萩は今が盛りで、その上に結んだ白露もこぼれ落ちて匂いたちそうだ。
(題、詠人とも記載無し)
秋風は 日ごとにふきぬ 高円の
野べの秋萩 ちらまくおしも
〈超意訳〉
秋風は毎日吹いているよ、これでは高円山の野辺に咲いている秋萩の花が散ってしまうだろうと惜しまれる。
題しらず 笠金村
たかまどの 野べの秋萩 いたづらに
ちりかずくらん みる人なしに
〈超意訳〉
高円山の野辺に咲く秋萩は、誰にも見られることなく散って地面に降りかかることだろう。惜しいことだ。
以上の四首で「高円」という地名が出てきます。この「高円山」は、奈良の南東、春日山の南にある山で標高は432メートル。志貴皇子の離宮が基とされる白毫寺が中腹にあり、また曾ては聖武天皇も離宮尾上宮を設けたとされています。そんな場所だけに『万葉集』でもよく歌枕とされ、特に秋の萩や月を詠み込んだものが多いそうです。そういえば、ここで取り上げた四首いずれも秋萩を題材とした歌ですな。
【参考文献】
『玉葉和歌集 上之一』吉田四郎右衛門尉刊行
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本大百科全書』小学館
『改訂新版 世界大百科事典』平凡社
関連記事:
by trushbasket
| 2024-03-12 21:12
| NF








