2024年 05月 08日
また藤原為時の漢詩を〜『題玉井山荘』〜
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大河ドラマ『光る君へ』もストーリーが早くも三分の一を過ぎ、藤原道長が政権首班の地位に。一方で主人公まひろ(紫式部)の父・藤原為時は冷飯を食わさせる身の上ですが、篤実な人柄の慕うべき父として描かれるようになってきた印象です。さて、久々にこの為時の漢詩をもう一つ取り上げようかと。題は『題玉井山荘』、七言律詩です。では見ていきましょう。
題玉井山莊
玉井佳名被世稱
松楹半接碧巖稜
山雲繞舍應褰幔
澗月臨窓欲代燈
梅發寒花朝見雪
水收幽響夜知氷
池邊何物相尋到
雁作來賓鶴作朋
玉井の佳名 世に称せらる、
松楹半ば接す 碧巌の稜。
山雲舎を繞りて 幔を褰ぐべく、
澗月窓に臨みて 燈に代へんとす。
梅は寒花を発きて 朝に雪ふれるかと見、
水は幽響を収めて 夜に氷れるを知る。
池辺 何物か相尋ぎて到る、
雁は来賓と作り 鶴は朋と作る。
(小島憲之編『王朝漢詩選』岩波文庫 401-402頁)
〈超意訳〉
山荘のある地の玉井という良き名は世間から称えられており、
松の柱は苔むして青い岩の角にほぼ接しているかのよう。
山にかかる雲が山荘の建物を繞るようにかかって薄暗いので垂れ幕を上げねばならないが、
谷に出た月が窓にのぞいているため、その光を灯火代わりにできそうだ。
梅が寒い中で花を咲かせたのを、雪が降ったかと見る朝もあれば、
水のかすかなせせらぎが聞こえなくなったことから、水が凍ったかと察する夜もある。
池のほとりに相次いでやってくるのは何者であるかといえば、
雁が客人として来たり、鶴が友として訪れたりしているのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
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韻脚は「称、稜、燈、氷、朋」の下平声十蒸。
以下は、語句解説です。
・玉井
清らかな水が出る井戸。中でも京都府綴喜郡井手町にあるものが井手の玉水として有名。
・被
「(他から)…される」という意味の受け身表現。
・楹
柱のこと。
・稜
物のかど。稜角。
・褰
かかげる。
・幔
引き幕、垂れ幕?
・澗
谷、渓谷。
・寒花
寒い時期に咲く花。
・幽
かすかな。
・来賓
招かれた客。
・鶴作朋
孤高清節を象徴する鶴を友とみなす表現は白居易の詩に多く見られるという。
『光る君へ』作中の為時も、孤高清節、という言葉は似つかわしい為人として描かれている気がします。ドラマも、目が離せない展開が続いていて今後も楽しみですね。
【参考文献】
小島憲之編『王朝漢詩選』岩波文庫
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本歴史地名大系』平凡社
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『動植物名よみかた辞典 普及版』日外アソシエーツ
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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