2024年 06月 05日
空海の漢詩「在唐觀昶法和尙小山」〜
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弘法大師空海が今年で生誕1250年になるらしいですね。
関連サイト:
「奈良国立博物館」(https://www.narahaku.go.jp)より
「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」(https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/202404_kukai/)
空海といえば日本仏教史における巨人なのは言うまでもありませんが、平安初期における代表的な漢詩人でもあったのはご存知の方もおられるかと。『性霊集』が有名ですね。
と言うわけで、今回は、この空海の漢詩を一編見てみようかと思います。彼が唐に留学していた時期の作品になります。
在唐觀昶法和尙小山 釈空海
看竹看花本國春
人聲鳥哢漢家新
見君庭際小山色
還識君情不染塵
唐に在りて昶法和尚が小山を観る
竹を看(み) 花を看る 本国の春、
人声鳥哢 漢家新し。
君が庭際に小山の色を見て、
還(また)識る 君が情の塵に染まぬことを。
(小島憲之編『王朝漢詩選』岩波文庫 240頁)
〈超意訳〉
唐で昶法和尚の庭の小山を見て
この庭の竹を見、花を見るにつけ我が国の春が思い出されるが、
人の声や鳥の囀りはこの唐土が新たに生気に満ちているのを知らせてくれる。
貴方の庭先にある小さな築山の景色を見ていると、
貴方が世俗の塵に染まらぬ清らかなお人柄である事が改めてわかるというものだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
△⚫︎△⚪︎⚫︎⚫︎◎
⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎⚫︎⚪︎◎
⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎⚪︎⚫︎
⚪︎⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎◎
韻脚は「春、新、塵」の上平声十一真。
以下、語句解説です。
・唐
空海が留学した804年から805年における中国王朝はまさしく「唐」(618-907)。文学史的には「中唐」の時期にあたります。
・本国
その人の生まれ育った国。ここでは日本。
・哢
鳥が鳴く。
・漢家
中国の称。上述の通り、この時の王朝は「唐」である。
・庭際
庭先。
・小山
庭の小さな築山。
・還
「また」
・塵
俗世間の煩わしさ。
空海が活躍した時期は、日本でも嵯峨天皇らを中心に漢詩が宮廷文学の主役を占めていました。空海もまたそれを彩る主要な一人であった事は日本文学史を見る上で忘れてはいけない事実だと思います。
【参考文献】
小島憲之編『王朝漢詩選』岩波文庫
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『日本歴史地名大系』平凡社
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『動植物名よみかた辞典 普及版』日外アソシエーツ
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
関連記事:
重陽が日本で定着したのも嵯峨天皇時代における大陸文化消化定着の一環だったようで。
by trushbasket
| 2024-06-05 21:48
| NF








