2024年 06月 17日
歌枕「有度浜」〜天人伝説もある、静岡の海岸〜
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しばらく更新をサボってしまい申し訳ありません。今回は久々に歌枕シリーズにて、お題は「有度浜」とさせていただこうかと。
有度浜は静岡市の駿河区と清水区にまたがる有度山南麓の海岸。時代によっては宇土浜、宇度浜、宇津浜なんて表記もされたそうです。
『久能山縁起』によれば、稲川太夫がこの地の松の下で天人の舞を見て子孫に伝えた、という伝承があるそうです。如何にも風光明媚な地らしい話ですね。それだけに昔から和歌の題材ともなり、延喜二十年(920)の『東遊歌』駿河舞歌の第一首に出てくる他、『古今六帖』にも
年ふれば 駿河なるてふ 有度浜の
うとくのみなど なりまさるらむ
〈超意訳〉
年月がたってしまうと、駿河にあるという有度浜ではないけれど、私とあなたとの間柄は「疎く」なってしまうものなんでしょうね。
なんて歌があります。そして手元の『玉葉和歌集』巻第十一 恋歌三にはこんな作品が。
寄海辺恋と云ことを 従三位為子
うき波の かかるとならば うと濱の
うとくて人に あらまし物を
〈超意訳〉
駿河の有度浜で泡が水面に浮かんだ波がうちかかるかのように、あの人との逢瀬で憂き思いばかりが打ち寄せるとわかっていたなら、有度浜の「うど」ではないがあの人とは疎遠なままでいたかったのだけれど。
「うと」だけに「疎く」にかけて恋歌で用いられた例が二つ。そんな感じで詠まれる事が多いのでしょうかね。
ちなみに「うきなみ」(浮波)とは、波頭が砕けて白い泡が浮かんだ波の事だそうです。それを「憂き」とかけたと思われます。
【参考文献】
『玉葉和歌集 下之一』吉田四郎右衛門尉刊行
『日本歴史地名大系』平凡社
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『大辞泉』小学館
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静岡県には、有名な歌枕が多い印象です。
by trushbasket
| 2024-06-17 20:39
| NF








