2024年 09月 01日
三千家、別称(と茶室の号)の由来
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千利休の流れを汲み、祖の教えを守りつつ茶の湯の世界で長きにわたり大きな存在感を示してきた「三千家」こと表千家、裏千家、武者小路千家。それぞれの家には茶室に由来する別称があるのはご存知の方も多いかと思います。そこで三千家の別称の由来について簡単にご紹介しようかと。まあ、茶の湯に詳しい方にとっては今更な話かもですが、温故知新ということで。
なお、今回、書籍だけでなく(当事者の公式見解が記されているという事で)三千家それぞれの公式サイトも大いに参照させていただきました。
・表千家「不審庵」
元来は利休の別号で、利休が大徳寺門前に造立した四畳半にも「不審庵」の掲額があったとされています。
「不審庵」の名は、利休が参禅した大徳寺の僧・古渓宗陳の「不審花開今日春」という句に由来。「不審」とは「訝しい」といったニュアンスだそうで、「春になると花が咲く、一見すると当たり前に見える事も人智を超えた自然の不可思議さであることよ」という意味合いが込められているとか。
現在の「不審庵」は少庵が利休の三畳台目を復興した事に端を発しています。その子である宗旦が同じ場所に「床なしの一畳半」茶室を建立し、これを「不審庵」と称しました。それを、家督を継いだ三男江岑宗左が建て直し平三畳台目としたのが現在の形です。なお今の茶室は大正期の再建。「不審庵」は茶室の名称であるだけでなく、表千家の別称でもあります。
・裏千家「今日庵」
正保三年(1646)に隠居した宗旦は旧来の屋敷の北に隠居屋敷を構え、そこに設けた一畳台目の茶室を「今日庵」と名付けました。これを継承したのが四男仙叟宗室。その系統は本家の裏手にあったことから「裏千家」と呼ばれます。そして「今日庵」は裏千家の別名にもなりました。
「今日庵」の名は、清巌宗渭が宗旦に書き残した「懈怠比丘不期明日」という一句に由来。「拙僧は怠け者ゆえ、明日の事などお約束できん」といった意味です。
手元の『茶の湯人物事典』はこんな逸話を記しています。宗旦が茶室を建立した時のこと。名を付けて貰うべく清巌禅師を招きましたが、約束の時間を一刻余り過ぎても禅師は来なかったため「明日改めてお越しくださるよう」と家人に伝言して別件で出かけました。禅師がやってきたのはその直後の事で、伝言を聞いて上記の文句を書きつけて帰ってしまいます。帰宅後にこれを見た宗旦はすぐに禅師を訪れて「今日今日と 言ひてその日を 暮しぬる あすのいのちは とにもかくにも」「邂逅比丘不期明日」の句を示し非礼を詫びたということです。
ともあれ、この一句に由来し、「明日の命も知れぬ人生、今日の出会いが尊い」というニュアンスで「今日庵」と付けられたようです。
・武者小路千家「官休庵」
宗旦の次男一翁宗守は一度千家を離れ吉岡家で塗師の道を進んでいましたが、後に千家に復して京都は武者小路の地に分家しました。武者小路千家の名は、この地名に由来します。その際に設けた一畳台目の茶室が「官休庵」であり、これが流派の別名にもなっているのは「不審庵」「今日庵」と同様です。
「官休庵」の号については、武者小路千家の公式サイトによれば、由来は明らかでないようです。ただ、高松の松平家に仕えていたのを辞して悠々自適の生活を選んだ事に因んで、「茶に専念するため官をやめた人の庵室」といった意味で名付けたのではないかとされています。
【参考文献】
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『日本大百科全書』小学館
『大辞泉』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『茶の湯人物事典 略伝・ことば・逸話』世界文化社
以下は、参照した三千家の公式サイト
表千家
「表千家不審庵」(http://www.omotesenke.jp)より
「不審菴の号のこと」(http://www.omotesenke.com/01.html )
裏千家
「裏千家ホームページ」(https://www.urasenke.or.jp)より
「裏千家について」(https://www.urasenke.or.jp/textc/about/)
武者小路千家
「武者小路千家官休庵公式サイト」(https://www.mushakouji-senke.or.jp)より
「武者小路千家官休庵について」(https://www.mushakouji-senke.or.jp/history/)
関連記事:
関連サイト:
それぞれの茶室の特徴をまとめてくれているサイトを。
「お茶を楽しむ生活」(https://mikiocha.jugem.jp/)より
「「不審庵」でお茶を点ててみる」(https://mikiocha.jugem.jp/?eid=225)
「「今日庵」でお茶を点ててみる」(https://mikiocha.jugem.jp/?eid=263)
「「官休庵」でお茶を点ててみる」(https://mikiocha.jugem.jp/?eid=270)
「茶室建築 Tea-Room」(https://note.com/sakurada_wa)より
「不審庵(京都表千家の茶室)」(https://note.com/sakurada_wa/n/n2d1cc42ed490)
「今日庵(京都裏千家の茶室)」(https://note.com/sakurada_wa/n/n177bc93d908e)
「官休庵(武者小路千家の茶室)」(https://note.com/sakurada_wa/n/nec020d2c300a)
by trushbasket
| 2024-09-01 11:22
| NF








