2025年 01月 29日
菊池渓琴『河内路上』〜南朝の悲運をうたう〜
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今回も、ネタに困りまして南北朝漢詩ネタになります。お題は菊池渓琴の七言絶句『河内路上』。
作者の菊池渓琴(1799-1881)は明治の漢学者で、紀伊国の人。名は保定、別号は海荘。和歌山藩で海防を担当した経験もある人物です。
では、見ていきます。
河内路上 菊池保定(溪琴)
南朝古木鎖寒霏
六百春秋一夢非
幾度問天天不答
金剛山下暮雲歸
(筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院 420-421頁)
南朝の古木 寒霏に鎖す。
六百の春秋 一夢非なり。
幾度か天に問ふも 天答へず。
金剛山下 暮雲帰る。
〈超意訳〉
南朝の時代を知る古い木は、寂しい靄に包まれている。
六百年という年月は一夜の夢のようで、今は昔と全く異なる。
天に向かって南朝の昔について何度も問うたけれど、答えが返ってくることはない。
かつて楠木氏が活躍した金剛山の下で、夕暮れ雲だけは当時と変わらず返ってきた。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
○○○●●○◎
韻脚は「霏、非、帰」の上平声五微。
以下、語句解説です。
・寒霏
さびしいもや。
・金剛山
奈良県と大阪府の境界にある金剛山地の峰の一つ。標高は1125m、古来から修験道の地として知られ葛木神社や如意輪寺がある。西の山腹には千早城や赤坂城があり、南北朝時代には楠木氏が南朝方として活躍した。
・暮雲
夕暮れの雲。
【参考文献】
筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『日本大百科全書』小学館
『改訂新版 世界大百科事典』平凡社
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞出版
『日本人名大辞典』講談社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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