2025年 02月 17日
大槻磐渓『楠公湊川戰死圖』~作者は、あの蘭学者の息子~
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とりあえずの埋めネタとして、またも南北朝をうたった漢詩の話を。今回取り上げるのは大槻磐渓『楠公湊川戰死圖』。大槻磐渓(1801-1878)は大槻玄沢の子です。蘭学者であった父と異なり朱子学者の道を進みましたが、外国事情や西洋砲術を学んで開国論を唱えるなど洋学への親和性も高い人物だったようです。仙台藩に仕えました。『孟子訳解』『近古史談』『古径文視』などの著作があります。
そんな磐渓が楠木正成を讃えた七言絶句が今回のテーマ。では、見ていきます。
楠公湊川戰死圖 大槻淸崇(磐溪)
王事寧將成敗論
唯知順逆是忠臣
斯公一死兒孫在
護得南朝五十春
(筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院 477頁)
王事寧ぞ成敗を将て論ぜん。
唯順逆を知る是れ忠臣。
斯の公一死児孫在り。
護し得たり南朝五十春。
〈超意訳〉
皇室の行う事については、どうして成功や失敗という観点から論じるものであろうか。
そんな事より、ただ道理に従うか背くかだけを知っているのが忠臣というものだ。
そんな忠臣であるこの楠公が湊川で戦死したあとも、その子孫たちが残っていて、
南朝を50年の年月にわたり守り抜いたのだ。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
○●●○○●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
韻脚は「論、臣、春」の上平声十一真。
以下、語句解説です。
・王事
王室、帝室に関すること。
・寧
ここでは「なんぞ」。
・将
「もち」、「もって」。
・成敗
成功と失敗。
・順逆
道理に従うことと背くこと。
・斯
これ、この。
・春
年月。
この時代における、楠木正成礼賛の詩の典型といえそうですな。「そういう時代だったのだなあ」とだけコメントしておきます。
【参考文献】
筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『日本大百科全書』小学館
『改訂新版 世界大百科事典』平凡社
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞出版
『日本人名大辞典』講談社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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