2025年 03月 21日
梅をうたう五山漢詩 釈周澤『春日口占』
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寒かったり暖かかったりが定まらないまま、三月下旬。梅もところによっては散ってしたりします。というわけで、時期はずれになりきらぬうちに梅を題材とした日本漢詩を。取り上げるのは、釈周澤の『春日口占』です。
作者の龍湫周沢(1308-1388)は、南北朝期の臨済僧。甲斐出身で武田氏の出。夢窓疎石に参禅し臨川寺・建仁寺・南禅寺・天龍寺の住持を歴任しました。漢詩や絵に長じており、「妙沢不動」と呼ばれる水墨画での不動明王像を残した事でも知られます。星宿吉凶の占いにも強い関心を持ち、それを足利義満に揶揄われた逸話もあるそうです。では、見ていきます。
春日口占 釈周澤
吟苦多年瘦入肩
自咍此癖未能痊
幽蘭死後禁詩久
又爲梅花作一聯
(筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院 177頁)
吟苦 多年 痩 肩に入る
自ら咍ふ 此の癖 未だ痊す能はざるを
幽蘭死後 詩を禁ずること久し
又梅花の為に一聯を作る
〈超意訳〉
長年詩作に苦しんで、肩も痩せるまでになってしまった。
なのに苦吟癖がまだ治っていないのは、自嘲せずにはいられない。
お気に入りの幽蘭が枯れてからは、長らく詩を作らないようにしていたのだが、
今、梅の花が咲いたのを見てまたもやそれを題材に律詩の聯一つを作った。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
⚪︎⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎◎
⚫︎⚪︎⚫︎⚫︎⚫︎⚪︎◎
⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎△⚪︎⚫︎
⚫︎⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎◎
韻脚は「肩、痊、聯」の下平声一先。
以下は、語句解説です。
・口占
口ずさむ事。特に、自分などを足跡で口ずさみ作ること。
・咍
あざ笑う、または喜ぶ。
・痊
癒える、癒やす。
・幽蘭
奥ゆかしい香りをさせる蘭。
・聯
律詩の、二句づつの区切り。転じて、詩を数行ずつまとめての区切り。
この一編、梅だけでなくこの時代にに栄えた五山文学の香りも伝えている気がします。
【参考文献】
筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『日本大百科全書』小学館
『改訂新版 世界大百科事典』平凡社
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞出版
『日本人名大辞典』講談社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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