2025年 04月 10日
五山漢詩、故事をうたう〜義堂周信『子陵釣台』
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前回に引き続き、五山漢詩について。今回も、義堂周信の詩です。題は、『子陵釣台』。作者・義堂周信については前回述べましたので、今回は割愛。この詩は、後漢初期の隠者で光武帝劉秀の旧友でもあった厳光を題材にしたもの。厳光についてはこちらで。では、見ていきます。
子陵釣臺
漢家諸將各論功
誰訪羊裘獨釣翁
强被劉郞尋舊約
一絲吹斷暮江風
(筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院 484頁)
漢家の諸将 各功を論ず
誰か訪はん 羊裘の独釣翁
強ひて劉郎に旧約を尋ねられ
一糸吹断す 暮江の風
〈超意訳〉
漢王朝復興に貢献した将軍たちは、それぞれ功績を論じ恩賞を得た。
そんな中で羊の皮衣を着て一人釣りをして暮らす隠者の老人など、誰も訪れるものはない。
だが光武帝その人が旧友として宮廷に招いてきたので、
その間は川辺で夕暮の風に釣り糸を垂らすのを中断せざるを得なかった。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、△はいずれも可、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。下にあるサイトも参考にしました。
関連サイト:
「平仄くん」(http://kanshi.work/pinyin/index.php)
△⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎⚪︎◎
⚪︎⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎◎
⚪︎⚫︎⚪︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎
⚫︎⚪︎⚪︎⚫︎⚫︎⚪︎◎
韻脚は「功、翁、風」の上平声一東。
以下は語句解説です。
・子陵
厳光の字。
・釣台
釣り糸を垂れる小高いところ。中国には、厳光以外にも太公望や荘子、韓信などの釣台の跡と伝承されるところがあちこちにあるという。
・漢家
漢王朝。ここでは、光武帝劉秀が復興させた「後漢」。
・裘
獣の皮で作った衣服。
・劉郎
劉の姓を持つ男子。ここでは光武帝劉秀。
中国史における故事もまた五山文学における題材であったこと、後漢初期の厳光はわが国でも名高い隠者であったことを読み取ってよさそうですね。
【参考文献】
筒野道明講述『和漢名詩類選評釈』明治書院
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『日本大百科全書』小学館
『改訂新版 世界大百科事典』平凡社
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞出版
『日本人名大辞典』講談社
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
『中日辞典 第三版』小学館
『普及版 字通』平凡社
『角川新字源改訂版』角川書店
新田大作『漢詩の作り方』明治書院
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
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