2025年 09月 30日
彦星は天の川を船で渡るバージョンもある?〜『続後拾遺和歌集』秋歌から〜
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ご無沙汰しています。すっかり不定期更新になってしまいました。あれだけ暑かったのに、いつのまにかすっかり涼しくなりましたね。
さて、今回は七夕の話題。季節外れもいいところですが、昔においては七夕は秋の季語でしたから、ご勘弁を。『続後拾遺和歌集』巻第四 秋歌上でこんな歌が出てきました。
二星待契といへることを 後二条院御製
心あらば 河浪たつな 天の河
船出まつまの あきの夕風
〈超意訳〉
天の川よ、もし人の心があるのなら河面に波を立たせないでおくれ。彦星が天の川を渡る船が出るのを待つ間にも、秋の暮の風が吹いてきたことだ。
題しらず よみ人しらず
銀河 河音きよし 彦星の
秋こぐ船の 波のさはぐか
〈超意訳〉
天の川の水音が清らかだ。彦星が秋に織姫に会うため船を漕いでいるので、波が立っているのだろうか。
天河 霧立わたり ひこぼしの
かぢ音聞ゆ 夜の更行ば
〈超意訳〉
天の川に霧が立ち込めており、夜が更けると彦星が渡河のため漕いでいる船の舵の音が聞こえてくる。
これらの歌を見る限り、「彦星が船を漕いで天の河を渡り、織姫に会いに行く」という前提で詠んでいるようですね。「鵲が作ってくれた橋を渡って会う」イメージしかありませんでした。
実際、これらの歌のすぐ後に
祭主輔親
あまの川 秋の契の ふかければ
夜半にぞ渡す かささぎのはし
〈超意訳〉
天の川では、秋になると大事な約束なので、鵲は夜中に織姫彦星を渡すための橋をかけるのである。
と「鵲の橋を渡る」という内容の歌も。
七夕に織姫彦星がどうやって天の川を渡るか、に関しても複数の説といいますか伝承があるという事なんでしょうかね。昔の和歌を見ていると、たまにこんな気づきがあるのが面白いところです。
【参考文献】
『続後拾遺和歌集』上 吉田四郎右衛門尉刊行
『精選版 日本国語大辞典』小学館
『世界大百科事典』平凡社
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by trushbasket
| 2025-09-30 23:47
| NF








