2007年 09月 12日
古今東西の萌える人々 ~17世紀のイラン人と現代日本人の少年愛を中心に~
|
16世紀から18世紀にイランを支配したサファヴィー朝ではミニアチュールと呼ばれる書物の挿絵が流行し、絵画美術が大いに発展したのですが、17世紀になると絵師レザー・アッバーシーとその弟子たちによって絵画の新時代が開拓されました。彼らは書物から独立した、単独の美術品としての絵画を生み出したのです。そして彼らが最も好み多く描いたのは、しなやかで涼しげな美少女および美少年の絵でした。そして、それらの少年少女は、一様に、ふくよかな顔と切れ長の目を有しており、写実したのではなく理想像を描いたのだろうと言われています。
なんだかその感性には、江戸時代の浮世絵だとか、現代オタクに近いものを感じます。
しかしイスラームは偶像崇拝を禁じておりイスラーム世界で人物像を描くことがまれだったと言われることを考えれば、その気合いの入り方は、他を圧して凄まじいと言うより他ありません。
現代オタク文化、例えば「作品中に出てくる人物(キャラクター)はみぃんな18歳以上だからね!」(『はじめてのおるすばん』)とか強弁して、世間の風潮にあらがい少女だか幼女だかの裸を描きまくっているエロゲ屋さんなんかも大したものですが、神の掟にあらがい理想の美少女および美少年を追求したレザー・アッバーシー一党の凄さには、さすがにエロゲ屋さんでも及びますまい。
それにしても、日本人の特徴とされる写実より理想という作風・感性が、はるか西のイラン高原にも共通していたというのは、一見、驚くべきことのような気がしますが、よくよく考えれば中国にしたってインドにしたってその美術がさほど写実的なようには見えず、ひょっとしたら写実的な美術なんてヨーロッパ人くらいしか作ってないんじゃないでしょうか。ってゆーかヨーロッパだって、中世の美術とか見ると別に写実的でもないですし、本来的には大して写実的な感性は持ってない気もするんですがね。
ひょっとしたら世界史の中では、古代のギリシア、ローマの美術およびその影響を受けたルネサンス以降のヨーロッパ美術だけが写実的、すなわち古代ギリシア人と古代ローマ人が写実的なだけではないのでしょうか?
現代ヨーロッパ人は「生き物ってグロいものだろ」(引用元は下記アドレス)と言いつつその上で、生き物を書く際はあえてグロいもの写実的に描写をしているらしく、そのことから考えても、写実的なものを理想的な美と感じるような感性は持っていないと言えそうですし。
参考
リアルな絵、デフォルメ絵(深く考えないで捨てるように書く)
http://d.hatena.ne.jp/azumy/20070908/1189234026
(ヨーロッパ人の発言は他所の記述からの引用であるが、その発言を記した方はしばしば書き換えを行う方であるとの指摘があるので、念のため、引用元としてこちらを使用することにします。)
ところでサファヴィー朝の人物画が美少女のみならず美少年を多く扱った背景には、当時の男色の流行があるとか。
サファヴィー朝の最盛期を築いた大君主アッバース1世なんか、生前に自分を描かせた唯一の絵で、しなだれかかってくる美しい小姓と睦み合った姿で描かれています。
国王に至るまで神の定めた偶像崇拝の禁に刃向かい、少年を偶像化しあがめ奉った社会というのはなかなか大したものですね。
サファヴィー朝のイラン人は、美少年への愛欲を高めることで現実を脱し神へと至ろうとしたギリシア人にも匹敵する、少年愛狂いといって良いのではないかと思います。
参考
偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529128/
そういえばサファヴィー朝の絵師たちと感性が共通していると指摘した現代ニッポンのオタク文化ですが、そこにも少年愛の流行する萌芽が見られ、消費者を倒錯の世界に突き落とすべく、幾多のヒロイン(男)を生み出してきました。
二十年ほど前のひばりくん(『ストップ!! ひばりくん!』)など、多くの少年を煩悶させたのではないかと言われています。最近では女の子のヒロインを差し置いて作品中第一位の人気を誇る瑞穂お姉さま(『処女はお姉さまに恋してる』あるいは『乙女はお姉さまに恋してる』)だとか、ファンの声に後押しされて脇役からヒロインに昇格しエロシーンまで作成された準(『はぴねす!』)だとか、ますます凄いことになっており、準なんか、ゲームに添付される特典テレホンカードの絵柄が「「乳首の露出が分かりにくい」とのご指摘」を客から受けて露出が増したほどの愛されっぷり(「アキバBlog(秋葉原ブログ)」の「準の裸エプロン 「乳首の露出が分かりにくい」とのご指摘→ 乳首を完全に露出」http://www.akibablog.net/archives/2006/07/post_658.htmlを参照)。
また最近では、こんな可愛い子が女の子のはずがない、なんて言い回しが流行しているほど。
挙げ句に、『オンナノコになりたい!』(一迅社)なる女装指南書が登場、「読み終わって一番初めに思った事が、「女装・・・してみたい」ですからね。 すんごい興味沸きましたからね。」(マンガがあればいーのだ。)などと、オタク文化界隈で話題になってるあたり、ひょっとしたら仮想世界から現実へとこの手の風潮が溢れ出し始めているのやもしれません。
参考
日本男児よ、ためらうな。女装指南書「オンナノコになりたい!」が発売です!(マンガがあればいーのだ。)
http://mangaen.blog30.fc2.com/blog-entry-470.html
仮にそうであったとしても、自由な人物造形が可能な仮想世界とはちがって、現実世界の生き物はなかなか容貌の点で満足いく水準が達成できませんから、仮想世界から現実世界へのオトコノコ志向の越境がそう簡単に成功するとは思えませんが、もともと長く力強い男色文化を持つ男色大国日本ですから、本気を出せば、二次元的感性と三次元的感性の壁、容姿の壁、さまざまな障壁を打ち破ってオトコノコ志向がリアルに流行することも絶対にないとまでは言い切れず、万が一には、またもや男色の盛行を目にすることもあるかもしれません。
参考資料
永田雄三/羽田正著『世界の歴史15 成熟のイスラーム世界』 中央公論社
多根清史/八霧敬次著『超エロゲー』 太田出版
YU-SHOW著「カワイければ♂でもイイ!?女の子以上にカワイイ「男の子」の世界」(『メカビ Vol.02』 講談社)
関連記事(2009年5月17日新設)
HENTAIとヘタレが咲き乱れる日本の文学的至宝・物語文学案内 「2/2 鎌倉編」下 注目はオトコの娘
ウホッ!いい日本史… 前近代日本男色略史
中国史における男色について
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
イスラム民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614b.html
エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html
リンクを変更(2010年12月8日)
なんだかその感性には、江戸時代の浮世絵だとか、現代オタクに近いものを感じます。
しかしイスラームは偶像崇拝を禁じておりイスラーム世界で人物像を描くことがまれだったと言われることを考えれば、その気合いの入り方は、他を圧して凄まじいと言うより他ありません。
現代オタク文化、例えば「作品中に出てくる人物(キャラクター)はみぃんな18歳以上だからね!」(『はじめてのおるすばん』)とか強弁して、世間の風潮にあらがい少女だか幼女だかの裸を描きまくっているエロゲ屋さんなんかも大したものですが、神の掟にあらがい理想の美少女および美少年を追求したレザー・アッバーシー一党の凄さには、さすがにエロゲ屋さんでも及びますまい。
それにしても、日本人の特徴とされる写実より理想という作風・感性が、はるか西のイラン高原にも共通していたというのは、一見、驚くべきことのような気がしますが、よくよく考えれば中国にしたってインドにしたってその美術がさほど写実的なようには見えず、ひょっとしたら写実的な美術なんてヨーロッパ人くらいしか作ってないんじゃないでしょうか。ってゆーかヨーロッパだって、中世の美術とか見ると別に写実的でもないですし、本来的には大して写実的な感性は持ってない気もするんですがね。
ひょっとしたら世界史の中では、古代のギリシア、ローマの美術およびその影響を受けたルネサンス以降のヨーロッパ美術だけが写実的、すなわち古代ギリシア人と古代ローマ人が写実的なだけではないのでしょうか?
現代ヨーロッパ人は「生き物ってグロいものだろ」(引用元は下記アドレス)と言いつつその上で、生き物を書く際はあえてグロいもの写実的に描写をしているらしく、そのことから考えても、写実的なものを理想的な美と感じるような感性は持っていないと言えそうですし。
参考
リアルな絵、デフォルメ絵(深く考えないで捨てるように書く)
http://d.hatena.ne.jp/azumy/20070908/1189234026
(ヨーロッパ人の発言は他所の記述からの引用であるが、その発言を記した方はしばしば書き換えを行う方であるとの指摘があるので、念のため、引用元としてこちらを使用することにします。)
ところでサファヴィー朝の人物画が美少女のみならず美少年を多く扱った背景には、当時の男色の流行があるとか。
サファヴィー朝の最盛期を築いた大君主アッバース1世なんか、生前に自分を描かせた唯一の絵で、しなだれかかってくる美しい小姓と睦み合った姿で描かれています。
国王に至るまで神の定めた偶像崇拝の禁に刃向かい、少年を偶像化しあがめ奉った社会というのはなかなか大したものですね。
サファヴィー朝のイラン人は、美少年への愛欲を高めることで現実を脱し神へと至ろうとしたギリシア人にも匹敵する、少年愛狂いといって良いのではないかと思います。
参考
偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529128/
そういえばサファヴィー朝の絵師たちと感性が共通していると指摘した現代ニッポンのオタク文化ですが、そこにも少年愛の流行する萌芽が見られ、消費者を倒錯の世界に突き落とすべく、幾多のヒロイン(男)を生み出してきました。
二十年ほど前のひばりくん(『ストップ!! ひばりくん!』)など、多くの少年を煩悶させたのではないかと言われています。最近では女の子のヒロインを差し置いて作品中第一位の人気を誇る瑞穂お姉さま(『処女はお姉さまに恋してる』あるいは『乙女はお姉さまに恋してる』)だとか、ファンの声に後押しされて脇役からヒロインに昇格しエロシーンまで作成された準(『はぴねす!』)だとか、ますます凄いことになっており、準なんか、ゲームに添付される特典テレホンカードの絵柄が「「乳首の露出が分かりにくい」とのご指摘」を客から受けて露出が増したほどの愛されっぷり(「アキバBlog(秋葉原ブログ)」の「準の裸エプロン 「乳首の露出が分かりにくい」とのご指摘→ 乳首を完全に露出」http://www.akibablog.net/archives/2006/07/post_658.htmlを参照)。
また最近では、こんな可愛い子が女の子のはずがない、なんて言い回しが流行しているほど。
挙げ句に、『オンナノコになりたい!』(一迅社)なる女装指南書が登場、「読み終わって一番初めに思った事が、「女装・・・してみたい」ですからね。 すんごい興味沸きましたからね。」(マンガがあればいーのだ。)などと、オタク文化界隈で話題になってるあたり、ひょっとしたら仮想世界から現実へとこの手の風潮が溢れ出し始めているのやもしれません。
参考
日本男児よ、ためらうな。女装指南書「オンナノコになりたい!」が発売です!(マンガがあればいーのだ。)
http://mangaen.blog30.fc2.com/blog-entry-470.html
仮にそうであったとしても、自由な人物造形が可能な仮想世界とはちがって、現実世界の生き物はなかなか容貌の点で満足いく水準が達成できませんから、仮想世界から現実世界へのオトコノコ志向の越境がそう簡単に成功するとは思えませんが、もともと長く力強い男色文化を持つ男色大国日本ですから、本気を出せば、二次元的感性と三次元的感性の壁、容姿の壁、さまざまな障壁を打ち破ってオトコノコ志向がリアルに流行することも絶対にないとまでは言い切れず、万が一には、またもや男色の盛行を目にすることもあるかもしれません。
参考資料
永田雄三/羽田正著『世界の歴史15 成熟のイスラーム世界』 中央公論社
多根清史/八霧敬次著『超エロゲー』 太田出版
YU-SHOW著「カワイければ♂でもイイ!?女の子以上にカワイイ「男の子」の世界」(『メカビ Vol.02』 講談社)
関連記事(2009年5月17日新設)
HENTAIとヘタレが咲き乱れる日本の文学的至宝・物語文学案内 「2/2 鎌倉編」下 注目はオトコの娘
ウホッ!いい日本史… 前近代日本男色略史
中国史における男色について
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
イスラム民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614b.html
エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html
リンクを変更(2010年12月8日)
by trushbasket
| 2007-09-12 21:08
| My(山田昌弘)








