2007年 10月 07日
メイドロボの精神史 後編
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前編はこちら(http://trushnote.exblog.jp/7527880/)
先日の前編では、西洋文学史上のメイドロボ物語を、古代中世を対象にいくつか見てみました。
今回は近世近代で何作品か見てみましょう。
近世になると、18世紀にはピュグマリオンの神話をネタにした多数の物語が見られたりするそうですが、ピュグマリオンは前編で既に述べたように、いまいちメイドロボっぽくないので、無視しておきましょう。それより近世で面白いのは18世紀末のジャン・パウルいう作家の小品『下僕-機械人間の履歴書』です。
なんでもこの作品は、奇妙な機械および機械人間の群れの住む星(地球)の不気味な有様を土星人に報告するという体裁の物語で、作中に登場する様々な機能の機械の中には、可愛らしい女中人形が存在するとか。
女中人形とははまさにメイドロボそのもの。
ちなみにこの女中人形の役割は、目覚まし代わりに毎朝やさしく起こしてくれることだそうです。やさしくかわいらしく起こしに来るだけが役目の女中とは何とも奇妙な存在です。物を噛む作業を代行してくれる咀嚼機械なんてものまで存在するこの不気味な物語世界では、女中の役割はかわいく朝起こすくらいしか残っていないというわけでしょうか?しかし起こしてくれる目覚ましが欲しければ、目覚まし時計に手でも生やせば十分でしょうに、あえてかわいい女中人形なあたりが素敵な趣味をしてると思います。
近代ともなればロボットの話などいくらでもあるのでしょうが、とりあえず19世紀はじめのホフマン『砂男』と19世紀終わりのヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』という二つの有名な物語を挙げておきましょう。
『砂男』は、何を血迷ったのか恋人そっちのけで、生気もなければ身のこなしもまずいオリンピアという娘に熱を上げた学生のナタナエルが、実はオリンピアがぜんまい仕掛けの機械人形であったのを知った衝撃で錯乱し、塔の上で「まわれ、まわれ、木の人形。まわれ、まわれ、お人形さん!」(『ホフマン短編集』池内紀編訳 岩波文庫 209頁)と叫んで恋人を人形扱いし、地面に投げ落とそうと大暴れの挙げ句、狂い極まってそこから身を投げて死ぬという話です。
『未来のイヴ』のほうは、ミス・アリシヤなる女性の完璧な美貌に打ち込みながらこの女の愚劣な中身に絶望し、「誰かがあの肉體から魂を取除いてくれないかなあ!」(『未來のイヴ』齋藤磯雄訳 創元ライブラリ 99頁)と嘆く青年エワルド卿のため、発明家エディソンが、彼女の美貌や声音を、かねてより開発中であった老い朽ちる事なき人造人間ハダリーの上に写し取り、理想の美女を作るという話。
エディソンによれば、この美女は人間の女ように愚劣で小賢しいだけの余計な意識によって男の「意識の否定」をすることなどなく、所有者の欲する動作や言葉をあらかじめ記録して、所有者が適宜行う操作に応じて所有者の「待ち受けて」いる望み通りの反応返答を同じように繰り返し、あたかも「「戀愛」の初期の」最も美しく幸福な「「理想」の時」を「永遠化」し、その後の「變化や衰退」によって男を幻滅に陥らせることなどないという、「至福の極致」を出現させる、魅惑の究極恋愛マシーン(268~280頁)。
ちょっとくらい不自然な反応があっても、「人間の生活や會話のもつ、當らずといへども遠からずといった永遠のあやふやさに包まれて、常に何らかの意味を帶びてその主題に適合してしまふ」(272頁)ものだから、細かいことは気にするな。
なんだか、消費者の願望する反応返答をあらかじめプログラムし、消費者にそれを導くための適切な操作を繰り返させ、出会いからくっついて情交するまでの恋愛初期の話ばかりを延々生産し続けているエロゲ業界のようなマシーンです。
ちなみにエディソンが人造人間開発に乗り出したのは、友人のアンダーソンが下らない女によって破滅させられ自殺したことが原因。「添え毛」でつくる「燃ゆるがごとき丈長髮」、「臙脂白粉」の演出する「白百合の肌」に「うるんで、ふるへる唇」、「アイシャドー」の描き出す「明眸」、「總入れ齒のばね仕掛」が支える「きららかに美しく小粒な齒並み」、「まるく盛り上がつた、灰色の綿のかたまり」でかさ上げした「盛り上がる見事な乳房」などなど、無数の「人工」で身をよろい、「凹面鏡」で「皺一つ見逃さずに、研究して」つくった「うぶな、皮肉な、媚びるような、天使のような、憂鬱な、微笑」を浮かべ、かくして全くの「人工物」となり、男の心に「錯覺を與へ」、「戀愛」なる「一種の病氣」を引き起こして「毎年幾千幾萬といふ分別ある男」を「破壞したり堕落させたりする」女達に怒りを覚え、彼は世の男達を救うために立ち上がったのです。彼女らのつくる「幻想に報いるに幻想を以てす」るために、彼女らの用いる「人工」を上回るより以上の「人工」、完全なる「人造人間」を造りだし、それによって男達の「低劣下賤な慾望を悉く、數時間内に消滅せしめ」、もって男達を女の魔の手から救わん。(250~259頁)
「今後は、僞瞞的にして平俗、かつ轉變常なき「現實」よりも、實證的にして摩訶不思議、かつ誠實二心なき「幻影」をこそ」(340頁)、「「科學」は、……戀の病からも人間を癒せる」(452頁)、彼はそう語ります。
なんか二次元とか三次元とか論じ出しそうな雰囲気ですよ。
ピュグマリオンも「本来女性の心に与えられている数多くの欠陥にうんざりして」(『オウィディウス 変身物語 (下)』中村善也訳 岩波文庫 73頁)妻を娶らず、果ては自作フィギュアとご結婚でしたが、物質的にはさまざまな進歩に充ち満ちた人類文明数千年の道のりであるのに、どこを切り出しても言ってることが変わりません。精神的には進歩しないものですなあ、人間は。
まあ、とにかくこの人造人間は完成し、エワルド卿も常識だの人間の尊厳だのという観点から多少の葛藤を繰り広げた後、結局ハダリーを受け入れ、お持ち帰りと落ち着くわけですが、お持ち帰りの途上、乗っていた船が沈んでハダリーは失われます。
ハダリーは、どうもエディソンの当初意図した意識を持たない蓄音機付きダッチワイフ以上の魂を持った奇跡的存在に仕上がってしまったようなので、これほどの短命に終わったことは、ようやくロボ愛に目覚め始めたエワルド卿のためにも、いささか惜しまれるところです。
ちなみこの奇跡のからくりを明かせば、どうもエディソンの助手を務めた謎の魂、夫の死後困窮と神経症に陥ってエディソンの庇護下に入ったアンダーソンの賢夫人に発現した別人格、ソワナが電気を介してハダリーに勝手に乗っかってしまった模様。しかるべき反応や言動を一々事前に想定して用意し固定しておこうというエディソンのやり口を全く無視し、一個の人格を用意してロボに乗せてしまうというこの手法、まさに大根、インゲン、あきてんじゃー。新たな手法でメイドロボの精神に革新をもたらすその有様は、長瀬のおじさまと全く異なる手法で珊瑚様がHMX-17を生み出したがごとし。HMX-17は良い物ですよ。
少々補足しておくと、HMX-17は『To Heart2』に登場するメイドロボのことで、例のマルチを作りだした来栖川エレクトロニクスの新世代機。長瀬のおじさまとは来栖川の開発主任で、マルチの生みの親と呼ぶべき人物。珊瑚様はHMX-17を開発した女の子です。そしてそのHMX-17で使われているOSこそが「大根、インゲン、あきてんじゃー(DIA)」であり、必要となる論理的思考や動作を事前に想定して集積しメイドロボのOSを組み上げた従来の手法を大きく転換、一個の意欲・感情を持った人格を育て上げてOSとし、そこから必要に応じて意欲・感情を満足させるための適切な思考および動作を想像かつ創造させる、新世代の高度かつ繊細なシステム。
仮に両者におでんを作らせるとすれば、従来型OSは所与のレシピ通りに作って、そこから大根が抜けたりインゲンが入ったりすることはないであろうが、DIAは、おでんを食べるという味覚的欲求を満足できる範囲内なら妥協して大根を抜いたり、満足度が不足するなら味を補完するためにインゲンを入れたりもあり得るのである。なお、このように喩えてはみたものの、メイドロボはものを食べたりしませんし、インゲンがおでんの味に貢献できるかどうかは残念ながらよく知りません。
それにしても、せっかく蓄音機付きのダッチワイフがDIA付きメイドロボに大化けしたというのに、西洋文学史上に、やっとこまともなヒロインになれたかもしれないメイドロボが登場したというに、完成直後に悲惨な喪失とは、西洋人はそんなにメイドロボが嫌いですか?神様は人を自分の似姿として造ったんですよ。ならば人間も、神の似姿にふさわしく、いつかは神に倣って似姿を造らねばならぬと思いませんか?ひょっとして神のごとく被造物に反抗されるのが嫌なのですか?
しかし、これでも西洋のメイドロボ物語としては随分マシな扱いな気はしますから、良しとしましょう。
だいたい、こんな理屈っぽくて長ったらしく、重苦しくて読みにくい小説、これ以上話を追加して長くなったらとても読む気にはなりませんしね。
ところでエジソンという男、宇宙人と戦わされたり(先日の記事を参照http://trushnote.exblog.jp/7516101/)、メイドロボ作らされたりと、あまり有名になりすぎると色々いじられ、なかなかに大変ですね。
とりあえず、西洋人はロボットが嫌いなのかして、西洋文学史上のメイドロボ物語はこんな感じに、聖書の人間創造の悲劇的失敗から始まって、やたらと悲惨だったり、いかがわしかったり、不気味だったり、ろくでもない話ばっかりです。
同じくメイドロボを描いたにもかかわらず、全く違った趣に、心温まるかわいらしい物語を仕立て上げてくれた現代日本人の感性は、とても素敵だと思います。
参考資料
『聖書 新共同訳』 日本聖書協会
『オウィディウス 変身物語 (下)』中村善也訳 岩波文庫
『ホフマン短編集』池内紀編訳 岩波文庫
ヴィリエ・ド・リラダン『未來のイヴ』齋藤磯雄訳 創元ライブラリ
種村季弘著『怪物の解剖学』 河出文庫
澁澤龍彦著『黒魔術の手帖』 河出文庫
澁澤龍彦著『少女コレクション序説』 中公文庫
椎名高志著『(有)椎名百貨店』 小学館
椎名高志著『GS美神 極楽大作戦!!』 小学館
『To Heart』 Leaf
『To Heart2 XRATED』 Leaf
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れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529065/
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
西洋民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html
エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html
リンクを変更(2010年12月8日)
先日の前編では、西洋文学史上のメイドロボ物語を、古代中世を対象にいくつか見てみました。
今回は近世近代で何作品か見てみましょう。
近世になると、18世紀にはピュグマリオンの神話をネタにした多数の物語が見られたりするそうですが、ピュグマリオンは前編で既に述べたように、いまいちメイドロボっぽくないので、無視しておきましょう。それより近世で面白いのは18世紀末のジャン・パウルいう作家の小品『下僕-機械人間の履歴書』です。
なんでもこの作品は、奇妙な機械および機械人間の群れの住む星(地球)の不気味な有様を土星人に報告するという体裁の物語で、作中に登場する様々な機能の機械の中には、可愛らしい女中人形が存在するとか。
女中人形とははまさにメイドロボそのもの。
ちなみにこの女中人形の役割は、目覚まし代わりに毎朝やさしく起こしてくれることだそうです。やさしくかわいらしく起こしに来るだけが役目の女中とは何とも奇妙な存在です。物を噛む作業を代行してくれる咀嚼機械なんてものまで存在するこの不気味な物語世界では、女中の役割はかわいく朝起こすくらいしか残っていないというわけでしょうか?しかし起こしてくれる目覚ましが欲しければ、目覚まし時計に手でも生やせば十分でしょうに、あえてかわいい女中人形なあたりが素敵な趣味をしてると思います。
近代ともなればロボットの話などいくらでもあるのでしょうが、とりあえず19世紀はじめのホフマン『砂男』と19世紀終わりのヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』という二つの有名な物語を挙げておきましょう。
『砂男』は、何を血迷ったのか恋人そっちのけで、生気もなければ身のこなしもまずいオリンピアという娘に熱を上げた学生のナタナエルが、実はオリンピアがぜんまい仕掛けの機械人形であったのを知った衝撃で錯乱し、塔の上で「まわれ、まわれ、木の人形。まわれ、まわれ、お人形さん!」(『ホフマン短編集』池内紀編訳 岩波文庫 209頁)と叫んで恋人を人形扱いし、地面に投げ落とそうと大暴れの挙げ句、狂い極まってそこから身を投げて死ぬという話です。
『未来のイヴ』のほうは、ミス・アリシヤなる女性の完璧な美貌に打ち込みながらこの女の愚劣な中身に絶望し、「誰かがあの肉體から魂を取除いてくれないかなあ!」(『未來のイヴ』齋藤磯雄訳 創元ライブラリ 99頁)と嘆く青年エワルド卿のため、発明家エディソンが、彼女の美貌や声音を、かねてより開発中であった老い朽ちる事なき人造人間ハダリーの上に写し取り、理想の美女を作るという話。
エディソンによれば、この美女は人間の女ように愚劣で小賢しいだけの余計な意識によって男の「意識の否定」をすることなどなく、所有者の欲する動作や言葉をあらかじめ記録して、所有者が適宜行う操作に応じて所有者の「待ち受けて」いる望み通りの反応返答を同じように繰り返し、あたかも「「戀愛」の初期の」最も美しく幸福な「「理想」の時」を「永遠化」し、その後の「變化や衰退」によって男を幻滅に陥らせることなどないという、「至福の極致」を出現させる、魅惑の究極恋愛マシーン(268~280頁)。
ちょっとくらい不自然な反応があっても、「人間の生活や會話のもつ、當らずといへども遠からずといった永遠のあやふやさに包まれて、常に何らかの意味を帶びてその主題に適合してしまふ」(272頁)ものだから、細かいことは気にするな。
なんだか、消費者の願望する反応返答をあらかじめプログラムし、消費者にそれを導くための適切な操作を繰り返させ、出会いからくっついて情交するまでの恋愛初期の話ばかりを延々生産し続けているエロゲ業界のようなマシーンです。
ちなみにエディソンが人造人間開発に乗り出したのは、友人のアンダーソンが下らない女によって破滅させられ自殺したことが原因。「添え毛」でつくる「燃ゆるがごとき丈長髮」、「臙脂白粉」の演出する「白百合の肌」に「うるんで、ふるへる唇」、「アイシャドー」の描き出す「明眸」、「總入れ齒のばね仕掛」が支える「きららかに美しく小粒な齒並み」、「まるく盛り上がつた、灰色の綿のかたまり」でかさ上げした「盛り上がる見事な乳房」などなど、無数の「人工」で身をよろい、「凹面鏡」で「皺一つ見逃さずに、研究して」つくった「うぶな、皮肉な、媚びるような、天使のような、憂鬱な、微笑」を浮かべ、かくして全くの「人工物」となり、男の心に「錯覺を與へ」、「戀愛」なる「一種の病氣」を引き起こして「毎年幾千幾萬といふ分別ある男」を「破壞したり堕落させたりする」女達に怒りを覚え、彼は世の男達を救うために立ち上がったのです。彼女らのつくる「幻想に報いるに幻想を以てす」るために、彼女らの用いる「人工」を上回るより以上の「人工」、完全なる「人造人間」を造りだし、それによって男達の「低劣下賤な慾望を悉く、數時間内に消滅せしめ」、もって男達を女の魔の手から救わん。(250~259頁)
「今後は、僞瞞的にして平俗、かつ轉變常なき「現實」よりも、實證的にして摩訶不思議、かつ誠實二心なき「幻影」をこそ」(340頁)、「「科學」は、……戀の病からも人間を癒せる」(452頁)、彼はそう語ります。
なんか二次元とか三次元とか論じ出しそうな雰囲気ですよ。
ピュグマリオンも「本来女性の心に与えられている数多くの欠陥にうんざりして」(『オウィディウス 変身物語 (下)』中村善也訳 岩波文庫 73頁)妻を娶らず、果ては自作フィギュアとご結婚でしたが、物質的にはさまざまな進歩に充ち満ちた人類文明数千年の道のりであるのに、どこを切り出しても言ってることが変わりません。精神的には進歩しないものですなあ、人間は。
まあ、とにかくこの人造人間は完成し、エワルド卿も常識だの人間の尊厳だのという観点から多少の葛藤を繰り広げた後、結局ハダリーを受け入れ、お持ち帰りと落ち着くわけですが、お持ち帰りの途上、乗っていた船が沈んでハダリーは失われます。
ハダリーは、どうもエディソンの当初意図した意識を持たない蓄音機付きダッチワイフ以上の魂を持った奇跡的存在に仕上がってしまったようなので、これほどの短命に終わったことは、ようやくロボ愛に目覚め始めたエワルド卿のためにも、いささか惜しまれるところです。
ちなみこの奇跡のからくりを明かせば、どうもエディソンの助手を務めた謎の魂、夫の死後困窮と神経症に陥ってエディソンの庇護下に入ったアンダーソンの賢夫人に発現した別人格、ソワナが電気を介してハダリーに勝手に乗っかってしまった模様。しかるべき反応や言動を一々事前に想定して用意し固定しておこうというエディソンのやり口を全く無視し、一個の人格を用意してロボに乗せてしまうというこの手法、まさに大根、インゲン、あきてんじゃー。新たな手法でメイドロボの精神に革新をもたらすその有様は、長瀬のおじさまと全く異なる手法で珊瑚様がHMX-17を生み出したがごとし。HMX-17は良い物ですよ。
少々補足しておくと、HMX-17は『To Heart2』に登場するメイドロボのことで、例のマルチを作りだした来栖川エレクトロニクスの新世代機。長瀬のおじさまとは来栖川の開発主任で、マルチの生みの親と呼ぶべき人物。珊瑚様はHMX-17を開発した女の子です。そしてそのHMX-17で使われているOSこそが「大根、インゲン、あきてんじゃー(DIA)」であり、必要となる論理的思考や動作を事前に想定して集積しメイドロボのOSを組み上げた従来の手法を大きく転換、一個の意欲・感情を持った人格を育て上げてOSとし、そこから必要に応じて意欲・感情を満足させるための適切な思考および動作を想像かつ創造させる、新世代の高度かつ繊細なシステム。
仮に両者におでんを作らせるとすれば、従来型OSは所与のレシピ通りに作って、そこから大根が抜けたりインゲンが入ったりすることはないであろうが、DIAは、おでんを食べるという味覚的欲求を満足できる範囲内なら妥協して大根を抜いたり、満足度が不足するなら味を補完するためにインゲンを入れたりもあり得るのである。なお、このように喩えてはみたものの、メイドロボはものを食べたりしませんし、インゲンがおでんの味に貢献できるかどうかは残念ながらよく知りません。
それにしても、せっかく蓄音機付きのダッチワイフがDIA付きメイドロボに大化けしたというのに、西洋文学史上に、やっとこまともなヒロインになれたかもしれないメイドロボが登場したというに、完成直後に悲惨な喪失とは、西洋人はそんなにメイドロボが嫌いですか?神様は人を自分の似姿として造ったんですよ。ならば人間も、神の似姿にふさわしく、いつかは神に倣って似姿を造らねばならぬと思いませんか?ひょっとして神のごとく被造物に反抗されるのが嫌なのですか?
しかし、これでも西洋のメイドロボ物語としては随分マシな扱いな気はしますから、良しとしましょう。
だいたい、こんな理屈っぽくて長ったらしく、重苦しくて読みにくい小説、これ以上話を追加して長くなったらとても読む気にはなりませんしね。
ところでエジソンという男、宇宙人と戦わされたり(先日の記事を参照http://trushnote.exblog.jp/7516101/)、メイドロボ作らされたりと、あまり有名になりすぎると色々いじられ、なかなかに大変ですね。
とりあえず、西洋人はロボットが嫌いなのかして、西洋文学史上のメイドロボ物語はこんな感じに、聖書の人間創造の悲劇的失敗から始まって、やたらと悲惨だったり、いかがわしかったり、不気味だったり、ろくでもない話ばっかりです。
同じくメイドロボを描いたにもかかわらず、全く違った趣に、心温まるかわいらしい物語を仕立て上げてくれた現代日本人の感性は、とても素敵だと思います。
参考資料
『聖書 新共同訳』 日本聖書協会
『オウィディウス 変身物語 (下)』中村善也訳 岩波文庫
『ホフマン短編集』池内紀編訳 岩波文庫
ヴィリエ・ド・リラダン『未來のイヴ』齋藤磯雄訳 創元ライブラリ
種村季弘著『怪物の解剖学』 河出文庫
澁澤龍彦著『黒魔術の手帖』 河出文庫
澁澤龍彦著『少女コレクション序説』 中公文庫
椎名高志著『(有)椎名百貨店』 小学館
椎名高志著『GS美神 極楽大作戦!!』 小学館
『To Heart』 Leaf
『To Heart2 XRATED』 Leaf
関連記事(2009年5月17日新設)
スイーツ(笑)断罪 1330 ~リアル女はノー・センキュー 僕はフィクションに恋をする~ 徒然草の恋愛論
「二次をつかむ男」~美女のフィギュアや絵を愛した前近代東洋人たちの話~
三島由紀夫について少し述べる~日本近代文学の幕を下ろす男~
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529065/
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
西洋民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html
エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html
リンクを変更(2010年12月8日)
by trushbasket
| 2007-10-07 13:27
| My(山田昌弘)








