2007年 11月 10日
覇者の胃袋 ~粗食、偏食、暴飲暴食の帝王たち~
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ここのところ食に関する記事が頻出していますが、
中国食人文化入門 ~中国的合理主義と、中国人であることおよび中国人があることの不幸について~(http://trushnote.exblog.jp/7602405/)
背徳美食倶楽部 ~人肉の味を探求・賞味する~(http://trushnote.exblog.jp/7619211/)
またもや食に関する記事になります。
しかし、食といいながら前二者は異形の食文化ばかり扱ってきたわけですが、今回は違います。遥かに真っ当な食事を扱います。
今回は、ヨーロッパ史上に覇権を打ち立て、多大な畏敬を受ける大君主達の飲食事情についてまとめます。さて、どんな壮大豪奢な食事が出てきますやら。
アレクサンドロス大王 ~酒乱のキ○ガイ兵隊王~
ギリシア軍を率いて連戦連勝し大帝国ペルシアを征服したアレクサンドロス大王は、身体的な欲求に対して良く節制したとされています。食事に関しては、征服地カリアの女王が多くの御馳走や菓子、腕の良い料理人を送ってよこしたときに、彼がそれを不要とした話が伝わっています。ただ夕食だけは豪華であり、しかも勝利と征服を重ねる内、その費用が跳ね上がっていったとのことです。
なお彼は酒癖は悪く、酔うと粗野な兵隊風を吹かせて長々と自慢話をしたりほらを吹いたりするので、うるさがられていました。しかも酔った彼は乱暴で追従を好んだので、良識ある人々ですら身の安全を守るために、必死に彼に媚びへつらわねばならなかったそうです。
酔った彼の暴走としては、ペルセポリスのペルシア王宮を焼失させた火災が挙げられます。この火災は、公式にはペルシア帝国に対する勝利を宣伝するために計画的に放火したものとされていますが、別の言い伝えでは、酒宴の果てに酔ったアレクサンドロスが、側に侍った娼婦タイスにけしかけられて、衝動的に火を放ったとされています。
この他、彼は、酒席での口論の末に、我を忘れて臣下のクレイトスを刺殺したこともありました。
彼の酒癖は酒乱の域に入っていると言って良いでしょう。酒乱って程度に留まってない気もしますが。
自称神の子で、飽きることなく戦争と征服に突き進む、相当に電波入った暴走人間ですし、むしろ、遠慮せずに、キ○ガイと呼ぶ方が良いかもしれませんね。
カエサル ~粗食の浪費家、しらふの革命軍人~
現在のフランスに当たるガリア征服を行って軍閥の頭目へと成長、政敵ポンペイウスとの覇権争いに打ち勝って地中海全域を包摂する大国家古代ローマ共和国の政治権力を一身に集中、事実上共和政治を廃止して皇帝の地位に登ったカエサルは、身なりを整えたり女性に贈り物をしたり様々の無駄遣いで、若い頃から相当な浪費家として知られており、実入りのない青年期には返す当てのない借金の山を積み上げていたほどでした。ですが彼はその割に、食事については非常に淡泊であり、饗宴に招かれた際に古くなったオリーブ油を出され、他の客がそれに見向きもしなかったときも、一人だけ機嫌良く食していたとのことです。(この逸話に関しては、アスパラガスにオリーブ油でなく香油をかけられたところ、他の客が文句を言うのをたしなめつつ、平然と食べたのだとも伝えられています。)
彼は酒は全く飲まなかったと言われ、政敵のカトーには、あとにも先にもしらふで国家転覆を謀るのはカエサルのみと評されています。
なお、彼の粗食を、名誉を重んじ労苦を厭わない美徳の一環のように紹介している史料もありますが、女や衣装のために借金の山を作ったことを思えば、たまたま飲食に興味が無かっただけで、断じて美徳の現れなんかではないと思います。魅力的な人物であり、労苦に平然と耐えた立派な人でもあったのは確かですが、品行という点ではそれほど優れた人物ではないですし。というか明らかにダメな人ですし。
アウグストゥス(オクタウィアヌス) ~虚弱で粗食な地味目の賢帝~
カエサル死後のローマ共和国の混乱を乗り越えて帝位につき、地道な改革によって、ローマに巨大国家にふさわしい政治体制を与えることに成功した、初代ローマ皇帝アウグストゥスは、食事はありふれた食品で済まし、それもわずかな量しかとりませんでした。しかも不規則な食生活で、胃袋が欲すれば場所を問わずたとえ移動中の輿や馬車の中でも食事したし、欲しなければ長時間絶食する事もあったとか。饗宴を開いても遅れて参加したり早めに退出したり、あるいは何も手を付けずに饗宴が終わってから一人で食事するなどしていたそうです。
粗末なパンや、雑魚、チーズ、いちじくを好んで食したとのことです。
酒は好みの種類も一応あったが少量しか飲めず、少し多めに飲むと吐いていたそうです。酒を飲む代わりに、湿らせたパンや、きゅうり、レタス、りんごを食すことが多かったと言われます。
彼は虚弱な体質でしたから、それが食生活にも現れていると言えるでしょう。
カール大帝(シャルルマーニュ) ~食欲魔人の焼き肉大帝~
現在のフランスからドイツ・イタリアの一部にかけて勢力を誇ったフランク王国を率い、より一層の勢力拡大を達成して西ヨーロッパの大半を制するとともに、皇帝を名乗るに至ったカール大帝は、控えめに飲食するよう心がけていたが、食事に関しては空腹は体に毒などと言ってなかなか節制できず、体格も太っていたそうです。日々の食事に供する品数は抑えていたものの、常に別枠で大好物の焼き肉を用意させていたと伝わっています。
彼の焼き肉好きは並はずれたもので、医者が、焼き肉でなくゆで肉を常食とするよう忠告したせいで、医者を敵視し病気の時も医者の言葉に従わなくなるほどでした。
(なお「焼き肉」と書きましたが、参考にした『カロルス大帝伝』では「燔き肉」と表記しています。)
また彼は旅行の途上で現地の司教にチーズを提供させたときに、青黴が入り込んだ部分を削ぎ落としたところ、そこが一番おいしいと忠告されてその味に感心し、青黴チーズを非常に好むようになりました。
そこで彼は司教に対して、大量に青黴チーズを届けるよう言いつけましたが、司教がチーズを手に入れてもそこに青黴が入っているかどうかは分からないと困惑したところ、全てのチーズを切り開いて青黴の入った所のみを集めて送るよう命じました。司教は三年後に蓄えたチーズを献上し、カールはそれをねぎらって最上の領地を与えたそうです。
カールは酒に関しては良く節制して飲み過ぎることはなかったと言われています。
それにしても、焼き肉と言いチーズと言い、また空腹に関する発言と言い、こうも食への執着を見せられると、食事の品数を抑えたのは、節制したと言うより単に好物の種類が多くなかったあるいは好物を食べるために余計なものを食べたがらなかっただけではないかとか考えてしまいます。酒にしたって好きではなかっただけではないかと…。
それでも王者の美食としてはそれなりに慎ましい気はしますが。
ナポレオン ~勤勉・粗食の軍人皇帝~
無数の戦勝によって皇帝の地位とヨーロッパの覇権を手にしたナポレオンは、過度の飲食を必要とせず粗食に耐えうる自分の体質を長所として喜んで、人間は大食いで病気になるが小食で死ぬことはないと語っており、飲食にあまり関心を向けなかったようです。権力を握った後も、彼の権力を利用して浪費を重ねる妻や兄弟、妹たちとは異なり、贅沢はしませんでした。晩餐は短時間で終え、何を食べたかほとんど憶えてもいなかったらしいです。
酒に関しては、ぶどう酒が彼の生活に不可欠のものだったとか。
ナポレオンは中年になってずいぶん太っているように見えるので、ほんとうに贅沢しなかったのか不思議なんですが、手元にある本では生活を楽しむ余裕はなかったとされていますし、贅沢した証拠は見つけられませんでした。
ひょっとしたら、偉くなって栄養豊かな料理が並んでいるのに、多忙の中で何を食べているかも気にせず適当に食事をすませ、結果養生も欠いて、いつのまにやら太ってしまったってところでしょうか?田舎者で軍人上がりの粗雑な人物ですから、贅沢しないからといって、わざわざ質素で健康的な生活を心がけるとも思えませんしね。
さて、ヨーロッパ史上の覇王の食卓を一通り見てきたわけですが、いまいち王者らしい豪奢な食生活を拝むことはできませんでした。一応それっぽいのは、アレクサンドロスの夕食くらいでしょうか。それにしたって、それほど美食にこだわってたわけではないようです。食に執着していたのはカール大帝ですが、さすが野蛮時代のヨーロッパ中世ってかんじの粗雑さです。
まあ、自力で覇権を打ち立てるような人物は、食事以外にもやるべきこと、興味あることが溢れているでしょうから、そんなに凝った美食はしないものなのかもしれませんね。
参考資料
『プルターク英雄伝(九)』河野與一訳 岩波文庫
大牟田章著『アレクサンドロス大王 「世界」をめざした巨大な情念』 清水新書
スエトニウス著『ローマ皇帝伝 (上)』国原吉之助訳 岩波文庫
塩野七生著『ローマ人の物語 IV・V・VI』 新潮社
エインハルドゥス/ノトケルス著『カロルス大帝伝』國原吉之助訳 筑摩書房
E・ルートウィッヒ著『ナポレオン伝』金沢誠訳 角川文庫
関連記事(2009年5月17日新設)
どれほど兵は神速を尊ぶか? ~歴史的に行軍速度を探求し戦争術評価の尺度とする試み~
偉大なるダメ人間シリーズ番外その3 シスコン大帝
東西ヒトブタ物語 ~王者という名の神官によって帝国創設の生け贄に捧げられた愚かで哀れな獣の話~
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
F.E.Adcock『ギリシア人とマケドニア人の戦争術』(翻訳)(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14618338/
引きこもりニート列伝その7 カエサル
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet07.html
ヴァイキング時代
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1997/970502.html
ポンペイウス
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980522.html
アレクサンドロス
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1999/991022.html
幕末の群像とナポレオン
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020621a.html
西洋軍事史(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14455214/
アテナイ下り坂の歴史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051202.html
(以下2010年6月26日加筆)
アレクサンドロス、カエサル、カール大帝、ナポレオンについては、
よろしければ社会評論社『ダメ人間の世界史』もご参照ください。
アレクサンドロス
おだて大好き、ほら吹きまくりの、ウザくてたまらん体育会系、周りにベッタリ絡みつく、面倒悪質な酒飲み野郎
カエサル
古代ローマの最強ニート、遊びに遊んで借金王、積もった借金は兵士の給料十一万年分
カール大帝
皇帝陛下の抑えきれない上下の肉欲を思い知れ ~焼き肉と妹の肉体を激しく貪った大皇帝~
ナポレオン ネルソン
英仏代表天才軍人は、浪費癖あるクズ女に惚れた弱みで貢ぎに貢いだ英仏代表ヘボ男
収録
リンクを変更(2010年12月8日、21日)
中国食人文化入門 ~中国的合理主義と、中国人であることおよび中国人があることの不幸について~(http://trushnote.exblog.jp/7602405/)
背徳美食倶楽部 ~人肉の味を探求・賞味する~(http://trushnote.exblog.jp/7619211/)
またもや食に関する記事になります。
しかし、食といいながら前二者は異形の食文化ばかり扱ってきたわけですが、今回は違います。遥かに真っ当な食事を扱います。
今回は、ヨーロッパ史上に覇権を打ち立て、多大な畏敬を受ける大君主達の飲食事情についてまとめます。さて、どんな壮大豪奢な食事が出てきますやら。
アレクサンドロス大王 ~酒乱のキ○ガイ兵隊王~
ギリシア軍を率いて連戦連勝し大帝国ペルシアを征服したアレクサンドロス大王は、身体的な欲求に対して良く節制したとされています。食事に関しては、征服地カリアの女王が多くの御馳走や菓子、腕の良い料理人を送ってよこしたときに、彼がそれを不要とした話が伝わっています。ただ夕食だけは豪華であり、しかも勝利と征服を重ねる内、その費用が跳ね上がっていったとのことです。
なお彼は酒癖は悪く、酔うと粗野な兵隊風を吹かせて長々と自慢話をしたりほらを吹いたりするので、うるさがられていました。しかも酔った彼は乱暴で追従を好んだので、良識ある人々ですら身の安全を守るために、必死に彼に媚びへつらわねばならなかったそうです。
酔った彼の暴走としては、ペルセポリスのペルシア王宮を焼失させた火災が挙げられます。この火災は、公式にはペルシア帝国に対する勝利を宣伝するために計画的に放火したものとされていますが、別の言い伝えでは、酒宴の果てに酔ったアレクサンドロスが、側に侍った娼婦タイスにけしかけられて、衝動的に火を放ったとされています。
この他、彼は、酒席での口論の末に、我を忘れて臣下のクレイトスを刺殺したこともありました。
彼の酒癖は酒乱の域に入っていると言って良いでしょう。酒乱って程度に留まってない気もしますが。
自称神の子で、飽きることなく戦争と征服に突き進む、相当に電波入った暴走人間ですし、むしろ、遠慮せずに、キ○ガイと呼ぶ方が良いかもしれませんね。
カエサル ~粗食の浪費家、しらふの革命軍人~
現在のフランスに当たるガリア征服を行って軍閥の頭目へと成長、政敵ポンペイウスとの覇権争いに打ち勝って地中海全域を包摂する大国家古代ローマ共和国の政治権力を一身に集中、事実上共和政治を廃止して皇帝の地位に登ったカエサルは、身なりを整えたり女性に贈り物をしたり様々の無駄遣いで、若い頃から相当な浪費家として知られており、実入りのない青年期には返す当てのない借金の山を積み上げていたほどでした。ですが彼はその割に、食事については非常に淡泊であり、饗宴に招かれた際に古くなったオリーブ油を出され、他の客がそれに見向きもしなかったときも、一人だけ機嫌良く食していたとのことです。(この逸話に関しては、アスパラガスにオリーブ油でなく香油をかけられたところ、他の客が文句を言うのをたしなめつつ、平然と食べたのだとも伝えられています。)
彼は酒は全く飲まなかったと言われ、政敵のカトーには、あとにも先にもしらふで国家転覆を謀るのはカエサルのみと評されています。
なお、彼の粗食を、名誉を重んじ労苦を厭わない美徳の一環のように紹介している史料もありますが、女や衣装のために借金の山を作ったことを思えば、たまたま飲食に興味が無かっただけで、断じて美徳の現れなんかではないと思います。魅力的な人物であり、労苦に平然と耐えた立派な人でもあったのは確かですが、品行という点ではそれほど優れた人物ではないですし。というか明らかにダメな人ですし。
アウグストゥス(オクタウィアヌス) ~虚弱で粗食な地味目の賢帝~
カエサル死後のローマ共和国の混乱を乗り越えて帝位につき、地道な改革によって、ローマに巨大国家にふさわしい政治体制を与えることに成功した、初代ローマ皇帝アウグストゥスは、食事はありふれた食品で済まし、それもわずかな量しかとりませんでした。しかも不規則な食生活で、胃袋が欲すれば場所を問わずたとえ移動中の輿や馬車の中でも食事したし、欲しなければ長時間絶食する事もあったとか。饗宴を開いても遅れて参加したり早めに退出したり、あるいは何も手を付けずに饗宴が終わってから一人で食事するなどしていたそうです。
粗末なパンや、雑魚、チーズ、いちじくを好んで食したとのことです。
酒は好みの種類も一応あったが少量しか飲めず、少し多めに飲むと吐いていたそうです。酒を飲む代わりに、湿らせたパンや、きゅうり、レタス、りんごを食すことが多かったと言われます。
彼は虚弱な体質でしたから、それが食生活にも現れていると言えるでしょう。
カール大帝(シャルルマーニュ) ~食欲魔人の焼き肉大帝~
現在のフランスからドイツ・イタリアの一部にかけて勢力を誇ったフランク王国を率い、より一層の勢力拡大を達成して西ヨーロッパの大半を制するとともに、皇帝を名乗るに至ったカール大帝は、控えめに飲食するよう心がけていたが、食事に関しては空腹は体に毒などと言ってなかなか節制できず、体格も太っていたそうです。日々の食事に供する品数は抑えていたものの、常に別枠で大好物の焼き肉を用意させていたと伝わっています。
彼の焼き肉好きは並はずれたもので、医者が、焼き肉でなくゆで肉を常食とするよう忠告したせいで、医者を敵視し病気の時も医者の言葉に従わなくなるほどでした。
(なお「焼き肉」と書きましたが、参考にした『カロルス大帝伝』では「燔き肉」と表記しています。)
また彼は旅行の途上で現地の司教にチーズを提供させたときに、青黴が入り込んだ部分を削ぎ落としたところ、そこが一番おいしいと忠告されてその味に感心し、青黴チーズを非常に好むようになりました。
そこで彼は司教に対して、大量に青黴チーズを届けるよう言いつけましたが、司教がチーズを手に入れてもそこに青黴が入っているかどうかは分からないと困惑したところ、全てのチーズを切り開いて青黴の入った所のみを集めて送るよう命じました。司教は三年後に蓄えたチーズを献上し、カールはそれをねぎらって最上の領地を与えたそうです。
カールは酒に関しては良く節制して飲み過ぎることはなかったと言われています。
それにしても、焼き肉と言いチーズと言い、また空腹に関する発言と言い、こうも食への執着を見せられると、食事の品数を抑えたのは、節制したと言うより単に好物の種類が多くなかったあるいは好物を食べるために余計なものを食べたがらなかっただけではないかとか考えてしまいます。酒にしたって好きではなかっただけではないかと…。
それでも王者の美食としてはそれなりに慎ましい気はしますが。
ナポレオン ~勤勉・粗食の軍人皇帝~
無数の戦勝によって皇帝の地位とヨーロッパの覇権を手にしたナポレオンは、過度の飲食を必要とせず粗食に耐えうる自分の体質を長所として喜んで、人間は大食いで病気になるが小食で死ぬことはないと語っており、飲食にあまり関心を向けなかったようです。権力を握った後も、彼の権力を利用して浪費を重ねる妻や兄弟、妹たちとは異なり、贅沢はしませんでした。晩餐は短時間で終え、何を食べたかほとんど憶えてもいなかったらしいです。
酒に関しては、ぶどう酒が彼の生活に不可欠のものだったとか。
ナポレオンは中年になってずいぶん太っているように見えるので、ほんとうに贅沢しなかったのか不思議なんですが、手元にある本では生活を楽しむ余裕はなかったとされていますし、贅沢した証拠は見つけられませんでした。
ひょっとしたら、偉くなって栄養豊かな料理が並んでいるのに、多忙の中で何を食べているかも気にせず適当に食事をすませ、結果養生も欠いて、いつのまにやら太ってしまったってところでしょうか?田舎者で軍人上がりの粗雑な人物ですから、贅沢しないからといって、わざわざ質素で健康的な生活を心がけるとも思えませんしね。
さて、ヨーロッパ史上の覇王の食卓を一通り見てきたわけですが、いまいち王者らしい豪奢な食生活を拝むことはできませんでした。一応それっぽいのは、アレクサンドロスの夕食くらいでしょうか。それにしたって、それほど美食にこだわってたわけではないようです。食に執着していたのはカール大帝ですが、さすが野蛮時代のヨーロッパ中世ってかんじの粗雑さです。
まあ、自力で覇権を打ち立てるような人物は、食事以外にもやるべきこと、興味あることが溢れているでしょうから、そんなに凝った美食はしないものなのかもしれませんね。
参考資料
『プルターク英雄伝(九)』河野與一訳 岩波文庫
大牟田章著『アレクサンドロス大王 「世界」をめざした巨大な情念』 清水新書
スエトニウス著『ローマ皇帝伝 (上)』国原吉之助訳 岩波文庫
塩野七生著『ローマ人の物語 IV・V・VI』 新潮社
エインハルドゥス/ノトケルス著『カロルス大帝伝』國原吉之助訳 筑摩書房
E・ルートウィッヒ著『ナポレオン伝』金沢誠訳 角川文庫
関連記事(2009年5月17日新設)
どれほど兵は神速を尊ぶか? ~歴史的に行軍速度を探求し戦争術評価の尺度とする試み~
偉大なるダメ人間シリーズ番外その3 シスコン大帝
東西ヒトブタ物語 ~王者という名の神官によって帝国創設の生け贄に捧げられた愚かで哀れな獣の話~
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
F.E.Adcock『ギリシア人とマケドニア人の戦争術』(翻訳)(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14618338/
引きこもりニート列伝その7 カエサル
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet07.html
ヴァイキング時代
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1997/970502.html
ポンペイウス
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980522.html
アレクサンドロス
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1999/991022.html
幕末の群像とナポレオン
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020621a.html
西洋軍事史(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14455214/
アテナイ下り坂の歴史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051202.html
(以下2010年6月26日加筆)
アレクサンドロス、カエサル、カール大帝、ナポレオンについては、
よろしければ社会評論社『ダメ人間の世界史』もご参照ください。
アレクサンドロス
おだて大好き、ほら吹きまくりの、ウザくてたまらん体育会系、周りにベッタリ絡みつく、面倒悪質な酒飲み野郎
カエサル
古代ローマの最強ニート、遊びに遊んで借金王、積もった借金は兵士の給料十一万年分
カール大帝
皇帝陛下の抑えきれない上下の肉欲を思い知れ ~焼き肉と妹の肉体を激しく貪った大皇帝~
ナポレオン ネルソン
英仏代表天才軍人は、浪費癖あるクズ女に惚れた弱みで貢ぎに貢いだ英仏代表ヘボ男
収録
リンクを変更(2010年12月8日、21日)
by trushbasket
| 2007-11-10 16:44
| My(山田昌弘)








