提督達の見たヘタリア ~イタリアは乞食、コソ泥、ごろつき、売女~
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イタリア。常に勝ち馬乗りの機会を窺い、次々同盟国を見捨てて歩く国。
イタリア。我らが日本にも同盟国面して寄ってきたかと思うと、気づいたときには敵側にいて賠償金をむしり取っていった下種野郎な国。
情けなさもここまで来れば芸になる。
最凶のヘタレ国家イタリアは、ヘタリアの愛称で今日もみんなの笑いものです。
ですが、およそ軽蔑するより仕方ない、情けな卑怯な近代史の持ち主なわりに、なぜだかこの国、不思議と憎まれません。馬鹿にはされますが。
それどころか、歴史を通じて、イタリアは割とみんなの憧れの的。イタリアの歴史と文化と豊かさに惹かれて、周りの諸民族はことごとくイタリアを目指します。
馬鹿だけど憎めない奇跡のヘタレ国家イタリア。
ボンクラなのにモテモテ。
ひょっとしてこの国は、エロゲ主人公の持つという奇跡のモテモテパワー、ヘタレ力の持ち主か?
さて、こんなお馬鹿さんな国イタリアは、19世紀半ばオーストリアとの戦争の海戦で、お馬鹿さんにふさわしい間抜けな敗北を喫します。
この戦い近代軍艦が艦隊で決戦する史上初の戦いだったのですが、なんと、大砲、火薬のどんどん進歩する近代にありながら、イタリア軍艦はオーストリア軍艦の頭突きを受けて沈没、近代艦隊戦にあっても古代の船のごとき頭突が有効な戦法であると、間違った教訓を残してしまい、近代海戦史が以後半世紀ほど混乱することになったのです。
実は、砲も大きな効果を上げていたらしいのですが、頭突きで沈むという格好いい負けっぷりが余りに目立ちすぎ、変な教訓が残ってしまったそうです。
こんな海軍史上の迷惑国家イタリアですが、今日は提督達の見たヘタリアということで、史上の偉大な海軍軍人さんの、容赦ないイタリア評を紹介します。
まずは、いくつもの大勝利に輝くイギリスの偉大な海軍軍人ネルソン提督。
彼は南イタリアのナポリ王国を訪れたときに、言いました。
ここはやせ楽士やへぼ詩人の国、売女やごろつきの国だ
(ロバート・サウジー『大航海者の世界VII ネルソン提督伝』原書房 200頁)
でも、彼は、こんな感じにヘタリアを軽蔑しつつも、ナポリ宮廷で好待遇を得ていた不倫の愛人の影響で、ヘタリアに愛情も感じるようになったそうです。
さすが馬鹿だけど憎めない国ヘタリア。
さらに我が国にも、イタリアに厳しい評価を下した提督がいます。それは中佐時代に大使館附武官としてイタリアに在勤した経験のある井上成美提督。この提督、武将としての能力については批判を受けることもあるのですが、知的能力は抜群。
太平洋戦争開戦前に、航空機の台頭する新時代の海上戦争の本質をいち早く見抜いて新軍備計画を提唱、不沈空母たる陸上航空基地の争奪こそが海上戦争の中心となるとして、南方島嶼の防備強化を主張した人物です。
ちなみに、彼のこの計画については、後にアメリカの海軍協会会誌で発表が為され、その時、アメリカ海軍高官が、このような発想の転換の出来る頭脳を海軍大学で育てたいのだと語ったそうです。
で、この切れ者のイタリアに対する評価を、阿川弘之『井上成美』新潮文庫の文章から引用すると
…過去にどのような偉大な学者芸術家を出していようと、彼ら大多数に染みついた乞食根性は抜きがたいものがあって、こんな国と手を結んだらとんでもないことになるというのであった。
(180頁)
…陽気で憎めないところはあるが、国民総自堕落、総コソ泥の感じを受ける──。
(181頁)
乞食だのコソ泥だの散々な評価ですが、馬鹿にしつつもやっぱりどこか憎めないわけですね。
さすがはヘタリア。
なぜだか憎めない、陽気でお馬鹿さんな国。
参考資料
ロバート・サウジー著『大航海者の世界VII ネルソン提督伝』原書房
阿川弘之著『井上成美』新潮文庫
高木惣吉著『私観太平洋戦争』光人社NF文庫
千早正隆著『日本海軍の戦略的発想』中公文庫
外山三郎著『近代西欧海戦史 -南北戦争から第二次世界大戦まで-』原書房
外務省「賠償並びに戦後処理の一環としてなされた経済協力及び支払い等」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/qa/shiryo/pdfs/shiryo_07.pdf
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http://trushnote.exblog.jp/14618338/
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http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet31.html
『軍事史概説 戦略と戦術の東西文明五千年史』(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14455184/
ネルソンについては
よろしければ、社会評論社『ダメ人間の世界史』
(「ナポレオン ネルソン 英仏代表天才軍人は、浪費癖あるクズ女に惚れた弱みで貢ぎに貢いだ英仏代表ヘボ男」収録)
もご参照ください。
(著作紹介2010年6月26日加筆)
おまけリンク
ヘタリア 心のそこからヘタレイタリアをマンセーする(キタユメ。)
http://www.geocities.jp/himaruya/hetaria/
イタリアのヘタレっぷりを擬人化してネタにしたマンガです
幻冬舎から書籍化しています
http://www.gentosha-comics.net/hetaria_fair/index.html
リンクを変更(2010年12月8日、21日)