2008年 06月 12日
「引きこもりニート列伝その35 ゴータマ・シッダールタ」補足―悟りと異性の好みと―
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「引きこもりニート列伝その35 ゴータマ・シッダールタ」
ブッダについての話題を少し。シッダールタが悟りを開く直前、中道の大切さを知り牛飼いの娘スジャータから乳粥を振舞われて体力気力を取り戻したという伝説は広く知られていると思います。これに関して、空腹が満たされただけでなく献じたのが若い女性だった事も彼の心を満たしたのではないか、と見る人は少なくないようです。例えば本田透氏が「喪男の哲学史」でそのような事を言っていましたし、芥川龍之介「俊寛」でも鬼界ヶ島で過ごしている俊寛が同様の考えを述べていました。更に手塚治虫「ブッダ」ではスジャータがシッダールタに結婚を迫ったりしています。やはりシッダールタもこのとき若い男性ですから、長い禁欲の果てで色々な欲望がたまっていたであろうと想像してしまうのはごく自然な事だと思います。ただ気になるのは、彼女はシッダールタの好みたりえたのだろうか?という極めて卑俗な事だったりします。
それについてですが、南方熊楠によれば以下のような伝承が残されているそうです。菩提樹の下で座禅を組み悟りを開こうとしているシッダールタでしたが、彼の悟りにより欲界が危地に晒されるのを恐れた魔王が自分の三人の娘を送り込みシッダールタを誘惑させ堕落させようとします。まず末妹の喜見が処女に化けて近づきますが、シッダールタは全く心を動かすことはありませんでした。次に次姉の可喜が初婚婦に化けて誘惑したところ、シッダールタは妻との新枕を思い出し少し心動きましたが耐え忍びます。最後に長女の可愛が既産婦となって現れますと、シッダールタは大いに揺れ動きあわや彼女に抱きつこうとまで思いましたが、神々の助けを得てようやく思いとどまることが出来たそうです。
以上の伝説から判断すれば、シッダールタはうら若き処女よりも成熟した人妻の方が好みであったという事になります。してみるとスジャータに心動かされたのかどうかも怪しいものです。しかし、この逸話は後世の創作と考えて恐らく間違いないでしょうから、シッダールタ本人の好みというより寧ろ伝承制作者や伝承が生まれた時代のインド社会における一般的好みを反映しているようにも思われます。したがって事の真相は文字通り神仏のみが知っている、というのが妥当でしょうね。
しかし、一応は仏教徒という事になっているのに罰当たりな話題を持ち出してしまったものです(汗)。ところでシッダールタの悟りを妨げようとした「悪魔」とは、彼の心中に存在した煩悩そのものであると考えられています。こうした人間である以上逃れられない煩悩とも正面から向き合い、そしてそれを克服した点に彼の本当の偉大さがあり、だからこそ「ブッダ」となれたといえるのでしょうね。
【参考文献】
南方熊楠コレクションⅣ動と不動のコスモロジー 南方熊楠 河出文庫
仏陀その生涯と思想 増谷文雄 角川選書
図説ブッダ 安田治樹編 大村次郎写真 河出書房新社
ブッダの生涯 小林正典 三友量順 新潮社
釈尊の生涯 中村元 平凡社
喪男の哲学史 本田透 講談社
羅生門・鼻 芥川龍之介 新潮文庫
ブッダ 手塚治虫 全12巻 潮ビジュアル文庫
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歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「引きこもりニート列伝その35 ゴータマ・シッダールタ」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet35.html)
以外には
「インド史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/060113.html)
「引きこもりニート列伝その27 南方熊楠」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet27.html)
by trushbasket
| 2008-06-12 00:50
| NF








