2008年 07月 24日
千年のサブカルチャー『源氏物語』への平安人の非難 源氏でキモオタがオナるから作者も読者も地獄に堕ちろ
|
なんだが先日、『源氏物語』ができて今年で千年だとか聞きましたが、今回のお題は『源氏物語』。
この『源氏物語』、ヘタレの分際でモテモテの理不尽性欲魔神、光源氏が、幼女から老女、継母に至るまで食いまくり、挙げ句に美形の男を女体化して犯ってみてえとか考える、エロゲまがいの逝ってしまったお話らしいのですが、なんだか百科事典(『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館 )で調べると「日本古典の最高峰」で「文学史上の奇跡」で、「世界的にも最高の文学としての評価をかちえている」らしいですよ?
不思議ですね。
だいたいこんなもん、本来の性格は、政治的に立身出世できない二級市民たる当時の女性が、暇に飽かせて書いた娯楽作品、主に私的な場において取り上げられる漢文学に劣後したサブカルチャーではないですか?ちょっと深刻ぶって苦悩とか描いて見せたからって、世界文学の最高位に上せるのはいかがなものか。
こんなもんを文学と呼んでは文学に失礼な気がしますし、クソつまらない文学なんかに分類しては、本来娯楽作品たる『源氏物語』にも失礼ですよ。
それにしても、苦悩してみせるだけでエロ・サブカルを世界文学の最高峰とか言って良いのですから、Fateは文学だとかCLANNADは人生だとか、Deep Loveはリアルだし、読んでて勉強になるだとかも意外と間違ってない気がしなくもないような…。
ちなみに、当時の人から見た『源氏物語』ですが、実在の人物像や人物名を引き写しつつ、実際の噂、醜聞を集積した、風俗小説であったそうです。
現実をモデルにした例を少し挙げれば、夕顔は具平親王の雑仕女の大顔が元になっており、六十歳の恋する女、源典侍は作者の兄嫁の源明子が元ネタで宮廷の官職の実名のまま使われているなどなど。
しかもこの物語は、そんなリアル感あふれる低俗な内容を、皇室スキャンダルを中心に据えるという刺激的な設定で語っているわけで、当時の人々は、おののきながら楽しみ興じ、物語は「一帖できるごとに、ほとんど今日の週刊誌のように廻し読みされたのだろう」(中村真一郎『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書 16頁)とのことです。
そういえば、女性週刊誌は妙に皇室ネタが好きですよね。
というわけで、この辺りから考えても、やっぱり『源氏物語』は、お高くとまった文学とか芸術とかいうより、俗書です。
それでも、Genjiは文学とか、Shikibuの小説は読んでて勉強になるとか、言いたい人は好きに言えば良いと思いますが。
で、破廉恥な内容の俗書のくせに無駄に名声高いおかげで『源氏物語』と作者の紫式部には、賞賛の一方で、歴史的に色々非難が向けられています。
儒教の流行った江戸時代には、好色だの淫乱だの不義だの散々に言う人がいましたし、もっと前の鎌倉時代ごろまでには、でたらめばかり描いた作者は地獄に堕ちたとかいう伝説も成立しています。
でまあ、ここからが今日の本題。
そんな史上に色々ある批判の中から一つ、ごく早い時期の面白いものを紹介してみようと思うのですが、
平安末・鎌倉初期の天台僧である澄憲(1126~1203)は『源氏一品経』という願文で、『源氏物語』の博識や巧妙さを讃えつつ、『源氏物語』を批判します。
すなわち
たぶん、
『源氏物語』のせいで、せっかくの箱入りの娘が知らん間にエロく堕落したり、寝る相手のいない孤独なキモオタ喪男が無駄にエロ妄想に耽るから、『源氏物語』の作者の霊も読者の男女もみんなまとめて地獄の剣で串刺しだ
って意味だと思います。
とりあえず「冷席に独り臥するの男は、これを披きて徒に思秋の心を労す」のあたりが、エロゲっぽくてステキですね。
参考資料
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
大野順一著『色好みの系譜』創文社
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
関連記事
孔子との関わりから本居宣長を見る―そしてキモオタ伝説がまた一ページ―
ヘタレ力 in 日本史
貴公子たちの蛮行―因果の歴史が、また一ページ―
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
偉大なるダメ人間シリーズその7 本居宣長(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529117/
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
源氏物語を読む
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980515.html
本居宣長
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2001/011214.html
おまけリンク
Fateは文学(はてなダイアリー)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/Fate%a4%cf%ca%b8%b3%d8?kid=220851
CLANNADは人生(はてなダイアリー)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/CLANNAD%a4%cf%bf%cd%c0%b8?kid=219289
女子高生「Yoshiの小説は読んでて勉強になるから好き」(電撃速報!!)
http://blitznews.blog97.fc2.com/blog-entry-334.html
リンクを変更(2010年12月8日)
この『源氏物語』、ヘタレの分際でモテモテの理不尽性欲魔神、光源氏が、幼女から老女、継母に至るまで食いまくり、挙げ句に美形の男を女体化して犯ってみてえとか考える、エロゲまがいの逝ってしまったお話らしいのですが、なんだか百科事典(『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館 )で調べると「日本古典の最高峰」で「文学史上の奇跡」で、「世界的にも最高の文学としての評価をかちえている」らしいですよ?
不思議ですね。
だいたいこんなもん、本来の性格は、政治的に立身出世できない二級市民たる当時の女性が、暇に飽かせて書いた娯楽作品、主に私的な場において取り上げられる漢文学に劣後したサブカルチャーではないですか?ちょっと深刻ぶって苦悩とか描いて見せたからって、世界文学の最高位に上せるのはいかがなものか。
こんなもんを文学と呼んでは文学に失礼な気がしますし、クソつまらない文学なんかに分類しては、本来娯楽作品たる『源氏物語』にも失礼ですよ。
それにしても、苦悩してみせるだけでエロ・サブカルを世界文学の最高峰とか言って良いのですから、Fateは文学だとかCLANNADは人生だとか、Deep Loveはリアルだし、読んでて勉強になるだとかも意外と間違ってない気がしなくもないような…。
ちなみに、当時の人から見た『源氏物語』ですが、実在の人物像や人物名を引き写しつつ、実際の噂、醜聞を集積した、風俗小説であったそうです。
現実をモデルにした例を少し挙げれば、夕顔は具平親王の雑仕女の大顔が元になっており、六十歳の恋する女、源典侍は作者の兄嫁の源明子が元ネタで宮廷の官職の実名のまま使われているなどなど。
しかもこの物語は、そんなリアル感あふれる低俗な内容を、皇室スキャンダルを中心に据えるという刺激的な設定で語っているわけで、当時の人々は、おののきながら楽しみ興じ、物語は「一帖できるごとに、ほとんど今日の週刊誌のように廻し読みされたのだろう」(中村真一郎『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書 16頁)とのことです。
そういえば、女性週刊誌は妙に皇室ネタが好きですよね。
というわけで、この辺りから考えても、やっぱり『源氏物語』は、お高くとまった文学とか芸術とかいうより、俗書です。
それでも、Genjiは文学とか、Shikibuの小説は読んでて勉強になるとか、言いたい人は好きに言えば良いと思いますが。
で、破廉恥な内容の俗書のくせに無駄に名声高いおかげで『源氏物語』と作者の紫式部には、賞賛の一方で、歴史的に色々非難が向けられています。
儒教の流行った江戸時代には、好色だの淫乱だの不義だの散々に言う人がいましたし、もっと前の鎌倉時代ごろまでには、でたらめばかり描いた作者は地獄に堕ちたとかいう伝説も成立しています。
でまあ、ここからが今日の本題。
そんな史上に色々ある批判の中から一つ、ごく早い時期の面白いものを紹介してみようと思うのですが、
平安末・鎌倉初期の天台僧である澄憲(1126~1203)は『源氏一品経』という願文で、『源氏物語』の博識や巧妙さを讃えつつ、『源氏物語』を批判します。
すなわち
故に深窓に未だ嫁がざるの女は、これを見て、偸(ヒソカ)に懐春の思いを動かし、冷席に独り臥するの男は、これを披(ヒラ)きて徒に思秋の心を労す、故に彼の制作の亡霊と謂い、此の披閲の諸人と謂い、定て輪廻の罪根を結び、悉く奈落の剣林に堕つ
(大野順一『色好みの系譜』創文社 244頁に引用された返り点つきの文章を読み下し)
たぶん、
『源氏物語』のせいで、せっかくの箱入りの娘が知らん間にエロく堕落したり、寝る相手のいない孤独なキモオタ喪男が無駄にエロ妄想に耽るから、『源氏物語』の作者の霊も読者の男女もみんなまとめて地獄の剣で串刺しだ
って意味だと思います。
とりあえず「冷席に独り臥するの男は、これを披きて徒に思秋の心を労す」のあたりが、エロゲっぽくてステキですね。
参考資料
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
大野順一著『色好みの系譜』創文社
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
関連記事
孔子との関わりから本居宣長を見る―そしてキモオタ伝説がまた一ページ―
ヘタレ力 in 日本史
貴公子たちの蛮行―因果の歴史が、また一ページ―
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
偉大なるダメ人間シリーズその7 本居宣長(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529117/
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
源氏物語を読む
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/1998/980515.html
本居宣長
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2001/011214.html
おまけリンク
Fateは文学(はてなダイアリー)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/Fate%a4%cf%ca%b8%b3%d8?kid=220851
CLANNADは人生(はてなダイアリー)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/CLANNAD%a4%cf%bf%cd%c0%b8?kid=219289
女子高生「Yoshiの小説は読んでて勉強になるから好き」(電撃速報!!)
http://blitznews.blog97.fc2.com/blog-entry-334.html
リンクを変更(2010年12月8日)
by trushbasket
| 2008-07-24 22:26
| My(山田昌弘)








